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シルクロード国献男子30年 第25回 陰徳文化から発信文化へ-各種寄付

国際協力実践家 小島康誉

世界遺産キジル千仏洞などのTV番組「天山を往く~氷河の恵み シルクロード物語~」(BSフジ2月放映)の事前告知をかねて始めた本シリーズ。世界的文化財保護研究などの国際貢献を連載中です。

複雑化する世界で生き残るには発信が必須活動。我が国も周辺国に遅れないように対外広報を強化し始めています。良いことは黙っているものだとする陰徳文化から発信文化へ日本も変わりつつあります。そんな流れにそって各種寄付を紹介します。最初に新疆を訪れた1982年のウルムチ仏教協会への寄付に始まり、和田&民豊博物館建設・南疆水利改善プロジェクト・ウルムチ&和田福祉施設備品・新疆文物考古研究所エレベーター・小学生学用品&寄宿舎用品・キジル千仏洞職員通勤用バス・農業用井戸掘削・学校修理・街路灯設置などの費用です。一部は友人の浄財も含んでいます。地元の方々に協力しての活動、喜ばれています。ありがたいことです。

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和田博物館開館式(撮影:浅岡俊夫氏)     バイラ村農業用井戸竣工式(撮影:楊新才氏)

先月末まで新疆を訪れていました。今回はキジル千仏洞で保護・研究・管理に従事する人たちの飲料水浄化設備資金を寄付。利用している水は塩分が高く、健康を阻害しているためです。完成が待たれます。

第31回新疆大学奨学金・第18回児童育英金・第16回新疆文化文物優秀賞の授与もしてきました。新疆大学では親友焦健さんの国際文化交流学院長就任を祝い、「21世紀は国際協力の世紀-新疆での貢献34年から」を講演。世界各国からの留学生をふくむ約140人へPPTで各種活動を紹介。相互理解促進の重要性を訴えました。『新疆世界文化遺産図鑑』を景品としてのクイズ方式は大好評、爆笑の渦でした。学院への留学生は中央アジア中心に外国から約500人、日本からは2人とのことでした。

カザフ族の子供70人が学ぶ西白楊溝小学校では踊りで歓迎をうけ手作りの感謝状をいただきました。約40人は通うのが不便で寄宿生。新疆文化文物優秀賞は日中関係の影響もあり、いったん終了していましが2年の空白をおいて今回5年延長・増額で合意し調印したものです。席上、新疆文化庁の穆合塔尓・買合蘇提庁長が面白い話を。「諸君、小島さんのこの頭陀袋を見よ。ボロボロだ。それだけ節約して皆さんに奨励金を出している。もっとも若者がジーンズをわざと破いてはいているから74歳の彼も若者だ。これをプレゼントする」と。ウイグル模様の手提げ袋をいただいた。一同から歓声があがりました。

また第5回「中国-アジア欧州博覧会」に招かれ、張春賢書記の後任としてチベット書記から赴任したばかりの陳全国新疆ウイグル自治区党書記や旧知の艾力更・依明巴海全人代副委員長、雪克来提・扎克尓主席らにも挨拶しました。雪克来提主席には10人の方々とともに会見しました。日本人では国際貿易促進 協会の方も一緒でした。

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新疆大学奨学金授与後にサインを求められ(撮影:新疆大)        文化文物優秀賞の諸氏と(撮影:甘偉氏)

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子供たちの未来に幸あれ(撮影:新疆政府)         児童からの手作り感謝状(部分)

ウルムチのホテルでオバマ大統領の国連での演説をBBC生中継で見ました。国連での最後となるであろう演説。世界最大の経済力と軍事力を背景にしたアメリカ大統領ですが、相対的地位の低下で国際協調を訴えるパワーもどことなく元気がないように感じました。

また安倍首相のキューバでの経済協力強化表明も見ました。その夜にはアメリカ長期滞在中の友人からホテルへ「元気ですか。日本を旅行してから中国へ帰りたいので日本のビザを申請したが駐アメリカ日本大使館に知人はいないか」と国際電話、携帯をもたない私のホテルがなぜ分かったのか?ビックリ。正に21世紀は国際協力の世紀ですね。

キジル千仏洞の直近写真ご紹介

今年は私がキジル千仏洞の修復保存に協力を開始して30周年にあたります。新疆文物局・亀茲研究院主催「小島氏新疆文化文物事業投身30周年記念座談会・資料展」にも先月参加。30年前の写真で修復前・修復工事・修復後を紹介しました。参加者の殆どは初めて見る写真に歓声度々でした。

ニヤ調査日本側隊員の孫躍新博士・周培彦夫妻の紹介で天津TV「泊客中国」(中国で活きる外国人)クルーが密着取材。日の出前から石窟前で待機・・・ドローンを見上げたり・・・急な階段を登ったり降りたり・・・壁画荒廃の原因を話したり・・・。求めに応じて動きました。新疆大学奨学金・文化文物優秀賞の授与式も撮影。日本での来月取材を経て来春放映とか。日本人の貢献が中国のTVで取り上げられることは日中相互理解の促進に役立ち嬉しいことです。

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朝陽に輝く谷西区(撮影:筆者)

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参観に向かう上海からの観光客(撮影:筆者)

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第38窟 主室窟頂(撮影:筆者)

種々の要因で減少していた参観者も戻りつつあり昨年は4万人が訪れたそうです。井上豪秋田公立美術大学准教授夫妻が壁画研究中でした。世界遺産キジル千仏洞の保存研究が更に進むことを願っています。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。