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シルクロード国献男子30年 第27回 誠意は通じる-指導者会見

国際協力実践家 小島康誉

私の国際貢献の舞台は中国新疆ウイグル自治区。シルクロードの真っ只中、中央アジアの一角、中国の最西部です。面積は日本の約4.4倍、モンゴル・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・アフガニスタン・パキスタン・インドと国境を接し、漢・ウイグル・カザフなど47民族約2,500万人が居住。豊富な文化財が残っています。30数年前にNHKの「シルクロード」で一躍有名になり、「シルクロード症候群」といわれるほどのファンが生まれました。訪問された方も多いかと思います。

中国は社会主義国家であり、よく言われるように共産党による一党独裁体制です。すべての権力を掌握しています。政府の上に共産党が位置づけられています。習近平国家主席の中国での報道肩書が「中国共産党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席習近平」とされていることでも明らかです。軍も国家でなく共産党の軍隊です。

政府系機関などにはすべて共産党支部があります。例えば日本の都道府県知事に相当する自治区主席の雪克来提・扎克尓氏は中国共産党新疆ウイグル自治 区委員会の副書記で、その上の書記の陳全国氏が新疆のトップです。新疆文化庁も同様で、庁長は副書記で、その上の書記が副庁長を兼務しトップです。新疆大学の学長は副書記で、その上の書記が副学長を兼務しトップです。このように二重構造で共産党が上位です。

そんな中国で活動するには、指導者の支持は不可欠。国際貢献も例外ではありません。新疆発展の基礎を築いた王恩茂書記にはじまり、宋漢良、王楽泉、張春賢歴代書記とも度々会見しました。私利私欲でなく誠意による人々の幸せ増進貢献ですので、その都度、全面的支持を得ました。8月末にチベット自治区書記から赴任した陳全国現書記にも、9月「中国-アジア欧州博覧会」歓迎宴席上、雪克来提・扎克尓主席の紹介で挨拶しました。鉄木尓・達瓦買提、阿不来提・阿不都熱西提、司馬義・鉄力瓦尓地、努尓・白克力歴代主席や雪克来提・扎克尓現主席との会見も多数に及びます。

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王恩茂元書記と(撮影:伊藤忠) 張春賢中央政治局委員・新疆書記と会見後に土産を頂く(撮影:楊新才氏)

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左)鉄木尓・達瓦買提主席宅にて(撮影:楊新才氏)
右)雪克来提・扎克尓主席と(撮影:楊新才氏)

指導者との会見では先方発言に続いて、私が活動報告や計画を話します。事前にイメージトレーニングを行い、メモは一切見ません。聞くことはほぼ分かるので通訳なし、話すときは正確を期すために通訳を通します。指導者には100%支持発言で応じて頂けます。会見には党委員会常務委員、外事弁公室書記or主任、文化庁書記or庁長、新疆大学書記or学長、档案局長、文物局長らが同席。TV各局や新聞各紙によって報道されますから指導者の支持が広く伝わります。おのずと活動しやすくなります。

四代前主席の鉄木尓・達瓦買提さんは88歳、病床に臥しておられる。見舞いもかなわず見舞い状を届けました。ご健勝を念じています。

話は日本とロシアに飛びます。来月15日、安倍首相がプーチン大統領と山口県長門市で会談すると発表されました。懸案である北方四島の返還に向けて、大きな前進があることを期待したいものです。両国指導者の英断を国民は待っています。

国際協力を世界へ発信

30余年にわたって日中双方の多くの方々のご指導ご協力をえて実践してきた新疆での国際貢献。このWebはじめ学術報告書や写真集などで公開してきましたが、いずれも日本語と中国語。残念ながらそれらは世界の主要言語とはいえません。やはり英語です。

そこで、英語で発信すべく、拙著『新疆での世界的文化遺産保護研究事業と国際協力の意義』(佛教大学宗教文化ミュージアム2013)を一部修正、後発事項を加筆し、英訳、ニヤ・ダンダンウイリク両遺跡学術調査日本側隊員の浅岡俊夫、安藤佳香、石田志朗、田中清美、吉崎伸各氏の玉稿を加え “Kizil, Niya and Dandanoilik Commemorating World Heritage Designation of Silk Roads … ”(『キジル・ニヤ・ダンダンウイリク-「シルクロード」世界遺産登録記念』)を10月末に上梓しました。英訳はダンダンウイリク調査隊員の高田和行・洋子夫妻に夜を徹して尽力いただきました。私も校正など徹夜徹夜で頑張りました。

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左)“Kizil, Niya and Dandanoilik”表紙
右)世界遺産キジル千仏洞(撮影:楊新才氏)

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世界遺産追加申請に向け保護工事すすむニヤ遺跡&ダンダンウイリク遺跡へ向かう調査隊員(撮影;筆者)

当初は非売品と考えていましたが、東方出版からの出版となり喜んでいます。海外でも販売されます。B5判・224頁・カラー写真180点、2,000円(税別)です。キジル千仏洞・ニヤ遺跡・ダンダンウイリク遺跡の大型写真も追加しました。アマゾンでも販売されますので、お取り寄せいただければ幸いです。迫力ある写真で石窟保護・沙漠での大規模調査・各種国際貢献の模様などがお分かりいただけると思います。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。