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シルクロード国献男子30年 第29回 なぜ国際貢献-戦争を抑止し平和を維持

国際協力実践家 小島康誉

友人やメディアから「なぜそんなに中国に協力するの?」、「左翼?」、「シルクロード狂い?」、「新疆って危険なのでは?」、「日本にも困っている 人いっぱいいるのに?」、「中国で約束どおり実行されているのか?」などと質問されること度々です。「外国ばかりで日本は?」と投書がきたこともあります。

ごもっともな質問と思います。中国新疆は考え考えた末に選んだわけではありません。ジュエリー専門店チェーン社長時代に、原石買付に訪れ、人々の温かい人情と豊富な文化財にひかれただけです。以来、延々35年間、あれこれやってきました。

金持ちがお金をポンと出し、先方が何かを建てるといった寄付ではありません。もちろんそれも貴いことですが、私は先方と相談し計画し参加し共同し・・・やってきました。

衝突もありました。迷いもありました。困っている人のお役に少しでもたてれば・・・世界的文化遺産を後世へ伝えねば・・・自分を育てようと努力して いる人を支援せねば・・・誤解されている日本を少しでも理解してもらえれば・・・・・・そんなこんなの使命感で長々やってきました。

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「使命感の重要性」を話す筆者を取材する天津TV(キジル千仏洞にて撮影:周培彦氏)

当初から「国際貢献」といった明確なイメージを持っていたわけではありません。続けているうちに、そんな括りで捉えるようになりました。国家を背景にした外交官でもない一庶民が必死になったところで、たいしたことは出来ません。

それでも、かなりの成果は上げました。例えば修復保護に協力したキジル千仏洞は世界遺産となり、中国の国宝中の国宝「五星出東方利中国」錦や法隆寺 金堂壁画の源流の実物資料ともいわれる「屈鉄線」壁画なども発掘しました。「新疆文化財考古分野では、小島氏がいなかったら20世紀末の中日共同ニヤ調査 はなく、21世紀初めの中日共同ダンダンウイリク調査はなかったと認識されている」(『新疆世界文化遺産図鑑』中国語版/新疆美術撮影出版社2015)と おだてられたり、奨学金などを提供した人たちは5,000人を超え、大量の活動や報道で日本理解促進に一定の効果をあげ・・・。

そんな活動は対立を和らげ信頼を増やす役割を少しは果たしたことでしょう。日中双方多くの方々のご指導ご尽力あればこそできた活動、重ねて御礼申し上げます。

国家の国際協力のみならず、NGO・企業・個人の国際貢献は戦争を抑止し平和を維持することに寄与する活動といえます。自国にいて相手国を批判するだけでは何も進まないと思います。

国内でのボランティアは?

「外国ばかりで日本は?」との投書にお答えすれば、東日本大震災復興支援では義捐金や各地での回向・慰問・応援購入に始まり、気仙沼中心にやってき ました。大震災写真を大量に掲載した拙著『ありがとう人生燃えつき店じまい』(東方出版2013)の販売冊数に応じて、仮設商店街「南町紫市場」へ復興資 金を贈呈。すがとよ酒店協力で銀座の有名店「鮨からく」の特上寿しと人気落語家「古今亭志ん輔」師匠の笑いあり涙ありの名人芸をふるまった「江戸前づくし の会」、サービス精神満点の「瀬川瑛子ショー」などで被災された方々を応援しました。

「瀬川瑛子ショー」は紫市場と共催、学生ボランティアにも会場案内など手伝っていただき、「ありがとう一日100回運動」有志から浄財もえました。市民会館1,060席が満席。瀬川さんの人柄で会場は拍手と爆笑につつまれました。

渡辺謙氏のカフェK-portでの「小島和尚を囲み語り食べる会」はあいにくの猛吹雪でしたが、すがとよ酒店と紫市場に協力いただき70名様に笑いと元気を提供。愛知・姫路からも被災地視察をかねて参加いただきました。

気仙沼へは過日も出かけました。自宅兼店舗を失った「すがとよ酒店」は高台での自宅再建につづき店舗も今月17日にオープン予定。隣は子息のコンビニ。お出かけ下さい。

南三陸町や石巻・陸前高田・八戸・福島原発近くなどへも度々行きました。いわき市では久之浜第一幼稚園「希望の桜」に出会い幼稚園再建資金も少しだ け提供しました。10月慰問された畏友本多廣賢師の話と青木孝子園長の便りによると「高台で工事が始まった。来年4月<久之浜こども園>として再スター ト」とのこと、復興が着々と進んでいるようで喜んでいます。名古屋や京都で被災紹介講演会も開催しました。南三陸町「カネサ海苔」の海藻類は美味しいと評 判で、今も知人らへ贈呈しています。

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気仙沼ボランティア「江戸前づくしの会」(13.02.09)&「瀬川瑛子ショー」(15.03.26)(撮影:筆者)

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全壊したすがとよ酒店跡に建つコンテナ(12.08.11)&開店目前の新店舗(16.10.23)(撮影:筆者)

日本はその位置するところから次々と天災がやってきます。先月にも東日本沿岸各地に津波が。地球のシワのなせるわざです。広島・口永良部島・熊本・鳥取・・・その都度、心ばかりの応援を。

先月は熊本へ。一時は18万人が避難された855ヵ所の避難所のなかで、最後まで残った避難所も閉鎖されるなど着々復旧中。しかし閉めたままの店舗や工事中のビルも・・・。この話は次回にでも。

熊本滞在中にドナルド・トランプ氏米大統領選で逆転勝利のニュース。ポピュリズム(大衆迎合)狙いで「ポスト・トゥルース・ポリティックス」(真実 を超えた政治post-truth politics=「虚偽」での世論誘導)手法を連発した人が選ばれるとは!驚きました。就任後に修正必至でしょう。日本と中国の関係にもいろいろと影響 が出てくることでしょう。

トランプ氏の勝利(正確には一般投票での暫定勝利であり、12月19日の大統領投票人の投票などでの「波乱」もありうる)にはFBIによる「クリン トン氏私用メール使用問題捜査再開発表から嫌疑なし発表」までの一週間に行われた大量の期日前投票に「FBI捜査再開」が大きな影響を与えたと思われます ね。垂れ流される情報を鵜呑みにする人たちが多いからです。私は国際貢献を続けているうちに情報を慎重に吟味するようになりました。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。