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国献男子ほんわか日記124 友人の熱意みのり内山書店が中国に復活!

国際協力実践家 小島康誉

内山書店と聞かれて、上海・魯迅・日中文化交流、とイメージが浮かぶ方はかなりの中国通。内山完造氏(故人)が1917年上海で開業した「内山書店」は、魯迅などが通い日中文化人の交流の場となった。1935年には東京店を開業し現在も盛業中。上海店は終戦で閉店。

テレビを見ていたら友人・趙奇氏が現れビックリ。日中共同ニヤ遺跡学術調査の日本側隊員である孫躍新博士・周培彦夫妻の縁で、天津テレビ「泊客中国」(中国で活躍する外国人にスポットをあてた長寿番組)が小僧の新疆での国際協力を特集した3番組「大愛無疆」「五星出東方利中国」「西域蒙娜麗莎」を2016~17年に制作し、18年1月に放送した際のスタッフ趙奇氏だった。新疆文物考古研究所・キジル千仏洞・ニヤ遺跡・交河故城・京都鴨川・知恩院・佛教大学や東京の寓居で取材を受けた。趙氏や尹暢副総監らと日中相互理解を語りあった。番組は好評で、中国伝媒大学・天津大学・天津美術館から講演に招かれた。

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相互理解の重要性を語る趙奇氏(NHKテレビより)

その趙奇氏は「泊客中国」で内山書店に関する番組を制作したきっかけで、同書店と天津出版伝媒集団有限公司の商標権使用契約締結にこぎつけ、7月「天津内山書店」を開店したとNHKテレビ。内山書店四代目の内山深社長は「中国に再び開店させることは、数十年来の夢でした。皆さんの支援に感謝します」とビデオメッセージ。開店式に参加した魯迅の孫の周令飛氏は「内山書店という中日友好の種が中国各地にまかれ、花を咲かせてほしい」、趙氏は「内山書店は中日友好・交流の懸け橋にならないといけない。来店するほど中日両国の相互理解が深められます」とインタビューに答えていた。日中間の相互理解促進を訴えている小僧は大喜び。次の天津訪問時には孫周夫妻と一緒に訪れま~す。

今更かえらぬ我が人生

9月10日、コロナ禍で1年半ほど休業していたパリのムーランルージュ(赤い風車)が再開した。♪「花はマロニエ シャンゼリゼ 赤い風車の踊り子の いまさらかえらぬ身の上を」、一世を風靡した「カスバの女」(作詞:大高ひさを・作曲:久我山明)の一節である。最初はエト邦枝が1955年に唄い、売れたのは2,000枚弱とか。その後、1967年緑川アコが唄いヒット、菊池章子・春日八郎・石原裕次郎・ちあきなおみ・藤圭子・美空ひばり・美川憲一・青江三奈・八代亜紀らもカバーし累計売上100万枚を超えた薄幸女性の物語である。

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小僧楽書:背景はパリ・ムーランルージュ(撮影:筆者)

この曲を持ち込んだ久我山明は現在の韓国出身の孫得烈。それを踏まえて小僧が『幻想カスバの女』を創作した。『国策・満蒙開拓団に身を投じた長野県出身の父と朝鮮族中国人女性を母として生まれた彼女は終戦を奉天(現・瀋陽)で迎えた。脱出時に両親とはぐれ、塗炭の苦しみを舐めながらも同胞らに助けられ、引揚げ船で舞鶴へたどり着いた時は16歳だった。父の故郷を訪れるも、既に亡くなっていて、親戚の冷たい目に耐えるしかなかった。別れの花を手向けた墓前で父の知人だという男に出会い、甘言にのり、新宿飲み屋街へ』

『占領軍の一翼を担っていた英領インド帝国の士官と恋におち、デリーへ。夫が駐フランス大使館付武官となりパリへ同行。仕合せな生活も夫の交通事故死で一変。ムーランルージュでバックダンサーとなるも妙な男に騙され、街角に立つことに。やがて流れ流され地中海をわたりアルジェの酒場女に、23歳だった』 ♪は「明日はチュニスかモロッコか 泣いて手をふるうしろ影 外人部隊の白い服」で終わる。嗚呼! 蛇足:パリ祭シャンゼリゼ通りでの軍事パレードの最後尾は外人部隊が務める。自衛隊が行進したこともある。

話は本題にもどり:この「ほんわか」ももっともらしいことを書かせていただいているが、恥をかいているだけ。我が人生も同様、子供の頃は親に逆らうばかり、浪人時はパチンコ屋通い、社長時代は年中ガミガミ、国際協力では走りすぎ、僧侶では住職拝辞続け・・・。反省は山ほどあるが、今更かえらない。コロナ禍もクヨクヨせず活動するのみ。前を向いて今日を生きてゆくのみ。嗚呼ほんわかほんわか。(09/28記)

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。