VOICE

国献男子ほんわか日記159 中国の“紅白”に日中隊発掘の「五星出東方利中国」

国際協力実践家 小島康誉

中国の春節を祝う中央テレビ(CCTV)恒例の年越し番組「春節聯歓晩会」が旧暦大晦日の1月21日から22日未明にかけ4時間半放映・配信された。日中共同ニヤ遺跡学術調査隊が発掘した「五星出東方利中国」錦の舞踊劇「錦綉」が約5分登場した。同番組は日本では「中国の紅白歌合戦」と称され、歌・舞踊・雑技など内容豊富な人気番組。今回の平均視聴率は20%余。中国国際電視台を通じて、日本やアメリカなど173の国と地域1000余の媒体で放送され、スマホなど含め延べ110億人次が見たとも報じられている。

“

写真はCCTV「2023年春節聯歓晩会」電子版より

筆者が新疆ウイグル自治区クチャ西方に所在し2014年には世界遺産となったキジル千仏洞の修復保存協力を開始したのは1986年。翌年には日中友好キジル千仏洞修復保存協力会を立ち上げ、89年までに多くの方々の浄財1億円余を新疆政府へ寄贈した。その縁で1988年から「日中共同ニヤ遺跡学術調査」(中国国家文物局批准・日本文科省助成)を開始した。西域南道の小都市ミンフゥンからタクラマカン沙漠へ中古トラックと四駆で北上。途中の小オアシスまで1日、さらに駱駝で3日を要して、遺跡中心の仏塔に到達した。

日中双方は調査を積上げ、1994年国家文物局発掘許可を取得、95年第7次調査で王族墓地を発掘し、棺に副葬されていた「五星出東方利中国」錦を発見した。五大精神「友好・共同・安全・高質・節約」のもと、双方隊員がリスペクトしあって奮闘した。ニヤ遺跡は『漢書』記載の西域36国「精絶国」。「五星出東方利中国」錦は約二千年前の西域(現在の新疆ウイグル自治区一帯)と中原王朝との文化・経済・政治などでの密接な関係を示す重要文物。

これまでに「1995年中国十大考古新発見」「20世紀中国考古大発見100」「出国(境)展覧禁止文物」「中国考古学百年百大発見」に選出された。またCCTVの大型番組「国家宝蔵」や新聞・ネットなどでも度々取り上げられた。昨年2月北京冬季オリパラに合わせて大型創作歌舞「五星出東方」が公演され多くの都市を巡回した。7月には習近平国家主席が新疆博物館で「五星出東方利中国」錦に見入り、貴重文化財の保護・活用が重要と指示した。「五星錦」発掘28年の時を経て、日中共同発掘品がCCTV「春節聯歓晩会」に登場し「中国考古学で最も偉大な発見のひとつ」と報じられ、私たちの活動が更に輝いた。

今年は「日中平和友好条約締結45周年」、しかし関係はギクシャクし続けている。悪化を食い止め改善へ向かうキーワードは「友好・理解・共同」と信じて、細やかながら実践し続けている。日本最大の中国情報サイト「レコードチャイナ」へ寄稿した同様記事ではニヤ調査に尽力いただいた諸研究機関名も記し、番組の動画も視聴できる。(01/31記)

大寒の銀座に咲く桜 寒さまた楽し

コロナ禍も明けつつあり訪日外国人も増加中。銀座ホコ天へ状況把握に出かけた。英語・中国語・韓国語・スペイン語・・・が飛び交っていた。買物ぶりは?とGINZASIXへ。皆さんの買物ぶりを眺めつつ屋上庭園へ。簡易スケートリンクでは家族連れが広東語ではしゃいでいた。屋上一角にはナント神社が鎮座。関東大震災でも燃え残り「火防の神」と、旧松坂屋銀座店の説明看板。お参りして見上げると桜が咲いていた。大寒(今年は1月20日~2月3日)最中の1月22日、ありがたい×ありがたい。桜にも合掌。

“

「鸖護稲荷神社」鳥居と最強寒波に耐え咲く桜(撮影:筆者)

夕やみ迫り同ビル食堂街の天ぷら屋へ、爺さんの「ツルツル頭・はんてん・素足・雪駄」を見つめたスタッフに「その筋の人?」と思われたようで断られ、串カツ屋へ。シャンパン好きの妻が発注すると「今日で閉店しますので半額です」と。ビックリ!合掌しつつ味わった。咲く桜もあれば散る桜もある。これが世の常、冬が寒いのは当然、また楽し。「散る桜残る桜も散る桜」と受け入れて、オイラも散るまで咲きま~す。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。