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国献男子ほんわか日記162 舞踊劇「五星出東方」が新疆へ里帰り

国際協力実践家 小島康誉

昨年2月北京冬季五輪に合わせて、北京の国家大劇場で上演された舞踊劇「五星出東方」は各地を巡り観客は5万人を超え、ネットでの鑑賞は延べ6億人を超えた。2月28日から3日間、新疆の中心都市ウルムチで公演され大好評を博した。日中共同ニヤ遺跡学術調査隊が1995年、新疆ウイグル自治区和田地区民豊県タクラマカン沙漠に残存するニヤ遺跡で発掘した「五星出東方利中国」錦を題材とした創作舞踊劇。いわば里帰りである。和田では3月12日から公演が始まった。中国で「中日調査隊が発見」などと多々報じられている。調査隊日本側隊長として嬉しい限り。日本でも複数ネットが筆者名入りで報じている。

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「五星出東方」の一場面、「新疆網」より

キジル千仏洞保存協力を縁として、1988年開始した「日中共同ニヤ遺跡学術調査」。民豊を出発してすぐに中古トラックは故障、装備などを四駆2台に積み換え、木を伐り道を拓き前進、1日がかりで小オアシス着。翌日、羊などの糞が浮いた水や食糧などを積んだ駱駝に跨り前進。正確な所在地も分からず生い茂る胡楊林帯を右往左往すること3日、遺跡中心に位置する仏塔に到達し、歴史的調査の幕が開いた。以来、日中双方は幾多の困難をはねのけ調査を重ね、中国国家文物局(文化庁相当)発掘許可と日本文科省科研費助成も獲得。第7次調査で王族墓地を発見し発掘。「精絶王・后」合葬棺に「五星錦」が副葬されていた。

現地調査は1997年まで9回実施し、それ以降は調査・研究成果を報告書や佛教大学・ウルムチ環球ホテル・北京大学での国際シンポジウム、講演などを通じて、日中双方はこの世界的文化遺産の重要性を訴えてきた。「20世紀中国考古大発見100」に選ばれるなど数々の栄誉を獲得、今年の中国の“紅白”にも登場した。今後益々評価は高くなるだろう。例えば拙著『中国新疆36年国際協力実録』(東方出版2018)に「一帯一路の歴史交流実例都市であるニヤ遺跡を世界遺産に」と書いたが、中国政府の尽力でやがて実現するのでは?

訃報:女性初の参院議長などを務めた扇千景氏(本名・林寛子)が3月9日、逝去された。89歳。筆者が新疆クチャ西方に所在するキジル千仏洞の修復保存に乗り出し、1987年設立した「日中友好キジル千仏洞修復保存協力会」の副会長として尽力いただいた。ご冥福をお祈り申し上げます。同千仏洞は2014年に世界文化遺産となった。(03/14記)

どうする家康誉

僧侶になったのは36年ほど昔、佛教大学仏教学科に社会人在学中のこと。宗教室で水谷幸正学長を師僧として「得度式」、剃刀が頭にあてられた。本多廣賢師に介添えいただいた。「これからは四と九の日に剃髪しなさい。心の汚れを取るため」と教えられた。翌年卒業し、2年間の加行課程へ入った。浄土宗大本山の金戒光明寺・清浄華院などで修行し、総本山・知恩院「伝宗伝戒道場」は雪が降り続く3週間。手足に霜焼けやアカギレができ、数日おきの風呂(行の一環で無言、時間も制限)は極楽だった。剃髪は今も続けている。

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康誉(ヤスタカ)楽書:剃髪を鏡に映し自撮り

今年の大河ドラマは「どうする家康」。今年2月は28日で終わり、29日がない。「どうする家康」ならぬ「どうする康誉」。3月4日まで待ったところで老人の髪はそんなに伸びない。剃ったところで心の乱れが取れるわけない小僧だが29日にあたる1日に剃った。剃髪は「どうする康誉」と考えるほどのことではないが、「どうする」は次々と現れる。その都度、考えるが悩むことはしない。誰にも日々生じる「どうする」、絶対的な答えはなく「適当」「そこそこ」「まあまあ」あたりが、「丁度いい加減」では? ほんわか本若。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。