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国献男子ほんわか日記175 安定と発展を再確認 新疆ウイグル自治区3週間

国際協力実践家 小島康誉

昨年は「日中国交正常化50周年」、今年は「日中平和友好条約締結45周年」、しかし祝賀ムードは殆どない。米中対立・領土問題・処理水問題など、さらにはコロナ禍で相互往来が途絶えていたことも一因であろう。筆者も2019年9月を最後に新疆を訪問できなかった。日中関係が冷え込んだままの今こそと老体に鞭打って4年ぶりに訪問。9月11日出発し10月2日帰国した。

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新疆ウイグル自治区トップ馬興瑞書記との会見を報じる「新疆日報」

その間に中国共産党中央政治局委員で新疆ウイグル自治区トップの馬興瑞書記と会見、新疆ウイグル自治区政府の艾尓肯・吐尼亜孜主席による歓迎宴出席、新疆文化観光庁長夕食会出席、新疆大学小島奨学金と新疆小島文化文物優秀賞授与、シルクロード児童育英金と図書贈呈、新疆活動40年記念講演、新疆活動40年記念答礼宴、ウルムチ・コルラ・ルオチェン・チエモー・ミンフゥン・ホータン・カシュ・アクス・クチャ・ハミを視察、各地政府夕食会出席、キジル千仏洞とニヤ遺跡の変化状況把握、タクラマカン沙漠一周鉄道完乗、取材多々受け、新疆政府外事弁公室主任見送り宴出席などの活動を行った。

新疆の安定と発展を再確認した3週間だった。また「日本への見方も少し変わった」「日本にもいろんな人がいることが分かった」などの声もいただいた。相互理解促進の一助となればと願うばかり。

馬興瑞書記との会見は12日午前、新疆迎賓館で約1時間にわたり行われた。艾尓肯・吐尼亜孜主席や張春林副書記・孫紅梅副主席・李柯勇党副秘書長・徐貴相外事弁公室書記・李国良教育庁書記・徐鋭軍文化観光庁書記らが参加した。

馬興瑞書記は「貴方は40年にわたり新疆の発展に興味を持ち、教育・文化事業発展に大きな援助を行い、日本で新疆への理解促進に努力し、相互交流と合作に尽力した。我々は感動しており、心から感謝する。新疆は現在、発展の重要な時期にあり、習近平国家主席は8月26日ウルムチで重要精神を示した。すなわち新時代の中国共産党の新疆政策を完遂し、長期にわたる安定と発展を図り、中国式現代化で、更に良い新疆を建設する。全力で改革発展安定政策とともに往来を積極化し国際協力を増進する。貴方はこれまで同様に新疆に関心を持ち支持し貴重な意見を多く提出し、各方面事業の発展と日本との交流に力を発揮してほしい」などと力強く挨拶された。

筆者は「コロナ禍で訪問しなかった間も新疆の発展に関心を持ち、ネット・出版・講演などを通じて新疆紹介に全力をあげてきた。例えば、馬興瑞書記が就任されたのは2021年12月25日だが、天山網で報道された直後に、ネットで略歴をふくめて紹介した。習近平国家主席の昨年7月と今年8月の新疆考察やタクラマカン沙漠一周鉄道開通も紹介した。また8月31日、大阪で開催された新疆文化観光庁と中国駐大阪総領事館の『新疆文化と観光交流イベント』では新疆の発展ぶりなどを挨拶し、これもネットで発表した。日本などでの新疆に関する報道は色眼鏡的であり、不正確な部分が多いとネットで発信している。新疆は一帯一路の要衝として益々重要になる」などと通訳を通じて挨拶した。これに対して、馬興瑞書記は「訪問活動を支持する。要求があれば何でも言ってほしい。何でも協力する」などと熱心に語り続け、各部門責任者に指示された。

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馬興瑞書記との会見を報じる「新疆テレビ」、正面右が馬書記、その右が艾尓肯主席

艾尓肯・吐尼亜孜主席による歓迎宴は13日夜、崑崙賓館で1時間余行われた。艾尓肯・吐尼亜孜主席は「ホータンで河北省党政代表団と活動して今、ウルムチへ戻った。貴方は私の古い友人で新疆の多方面に多大な時間と資金と知恵を投入してくれた。新疆各民族は忘れない。馬興瑞書記の指示もあり活動を全面的に支援する。私は青年時代に日本へ行ったことがある。習慣などの違いで双方が気をつかったが、楽しい思い出だ」などとエネルギッシュに挨拶された。

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艾尓肯・吐尼亜孜主席による歓迎宴前の温かい握手、主席左が孫紅梅副主席

筆者は「長年の支持に感謝している。2005年資金協力したホータン博物館の開館式ではホータン地区専員(地区政府のトップ)として、2015年新疆大学小島奨学金授与式では新疆政府副主席として、温かいスピーチをいただいた。主席に就任された2021年9月30日直後にネットで紹介記事を出した。今後も相互理解促進へ微力を尽くすので、よろしくお願いしたい」などと拙い中国語と日本語で挨拶した。濃厚な時間が楽しく過ぎていった。

サプライズ:馬興瑞書記と会見した夜は新疆文化観光庁のグリ庁長による夕食会、10人ほどでワイワイ団欒していると、流れぱなしだったテレビが馬興瑞書記との会見のニュース。一同「オー」と歓声を上げ乾杯! 艾尓肯・吐尼亜孜主席歓迎宴では主席の音頭で乾杯、「ずいぶん甘い赤ワイン」と思ったら何と「ザクロ」のジュース。行事などの簡素化を定めた「八項規定」にそい、また団結のシンボルとしても使用していると。各地での夕食会もすべて「ザクロ」のジュースだった。

付記:出発前には風邪で高熱、転倒し歯を折り眼鏡は割れ人生初の救急車。完治する間もなく3週間の視察、5㎏痩せるも爺さんは元気、ご安心を。次回以降も相互理解活動を紹介予定。「レコードチャイナ」でも活動記録を発信中。10週連載のタイトルは「新時代の新疆ウイグル自治区」、参照くだされば幸いです。「ほんわか」174で「ビザ申請中、間もなく取得予定」と記したビザは出発3日前に取得。(10/10記)

継続こそ力なり

「継続は力なり」と、言われている。それを実感した新疆3週間。上述のように厚待遇を受けたのは、40年にわたり現地の人々とリスペクトしあって、活動を継続してきたから。

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沙漠一周鉄路の車内ワゴン買物もQR、使用していない小僧は掌に書いたが、断られた(笑)

政府の高級官僚でも大会社の経営者でもない一民間人に、中国共産党中央政治局委員が会見し、新疆ウイグル自治区政府の主席が歓迎宴を開き、各地方政府が当方の要望に沿って完全手配、各視察先での熱烈歓迎・・・・・・。感謝するとともに「継続こそ力なり」と再確認。と言っても無理なことは無理にせず、ボチボチやります。ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。