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国献男子ほんわか日記24 言葉の違いを乗り越えて

国際協力実践家 小島康誉

実践してきた国際協力ではその度ごとに交渉し、重要な活動では協議書を交わしてきました。その場合に問題となるのは言葉の意味です。間違った理解での契約では後に問題が生じます。

しかし日本と中国では言語が異なります。同じような漢字でも意味が異なる場合もあります。例えば、日本語の手紙は中国語ではトイレットペーパー、同様に汽車は自動車、花子は乞食、百姓は人民、老婆は妻、猪は豚、便宜は安価…と異なります。中国語の愛人は配偶者を指しますが日本語では「愛人」です。慎重の上にも慎重をきしました。中国に限らず外国人との意思疎通では皆さん苦労されていますね。

外国とでなくて、国内でも同じような例があります。「神宮大麻」ってご存知ですか。伊勢神宮のお札のことです。畏友・柴原薫氏(南木曾木材産業社長)の計らいで、今年10月、神嘗祭に参列させていただいた際、三重県神社庁の原宮司より詳しく説明を受けました。

神社本庁編『むすび』に「神宮大麻の由来」として「皇室の御先祖である天照大御神をおまつりする伊勢神宮は、日本人の心のふるさととして、いつの時代にも人々の崇敬が寄せられてきました。その神宮のお神札である『神宮大麻』にどんな歴史があるのでしょうか」、に続きいわれや歴史などが記載されていました。

大麻と聞くとマリファナを連想し、芸能人らの逮捕の場面が浮かび、伊勢神宮のお札「神宮大麻」には結びつきませんね。神社でお祓いに使う白い紙の祭具も大麻(オオヌサ)と言うそうです。神社のお札とマリファナでは大違いですね。

麻には抗菌作用があり、昔は手術の傷口は麻糸で縫っていたとか。今でも赤ちゃんの産着の模様は「麻の葉」が定番のようです。同じ「大麻」でも意味が異なるのですね。良い勉強をさせていただきました。

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神嘗祭の前に内宮正宮参拝(撮影:筆者)

神嘗祭は伊勢神宮の1500を数える祭事でも、最も重きを置かれているそうです。300人が降りしきる豪雨、漆黒の闇の中、内宮の参道で直立し待つこと30分、黒田清子祭主(天皇皇后両陛下長女)や神官がしずしずと到着、神事が行われ、そして正宮へ。一行に従って正宮へ向かう頃はずぶ濡れでした。参拝時は中まで入れて頂きましたが、神事は外から拝するだけ。闇と雨で、何が行われているかはよく分かりませんでしたが、新米などを捧げ、豊作や国民の平安 を祈願する儀式が厳かに行われました。ありがたい体験でした。なお、柴原薫氏からの便りでは、次の遷宮(2033)に向けて、10月末に「御用材伐採斧入式」が長野県上松町の国有林で行われたそうです。壮大な話ですね。

言葉つながりでは「オンデマンド」も知りませんでした。NHK「シルクロード・壁画の道をゆく」が好評で沢山の方から便りをいただきました。その一通に「オンデマンドで拝見。長年の尽力に感動。ラピスラズリの青が素晴らしい。仏教美術が日本へ伝わった流れがよくわかった」とあり、オンデマンドって何と知人に訊ねました。ガラケーも持っていない化石人間には困ったものです。

さて、私の中国語レベルは宴会水準ですので、重要な場面では通訳を介するなどして、言葉の違いを乗り越え、国際貢献をヨチヨチ続けてきました。来月も奨学金の授与などで新疆です。

人生100年時代-今ここ自分

しばらく前ですが読売新聞が首相官邸で開かれた「人生100年時代構想会議」(議長・安倍首相)を報じていました。ロンドンビジネススクールの教授が「長寿化にともなう新たな人生のあり方として、従来の教育・仕事・引退という三つのステージを経る単線型からマルチステージ(複線型)の人生を送るようになる」と提言したそうです。

私はこの複線型人生を送ってきました。企業経営をしながら、シルクロードで世界的文化遺産の保護研究活動を展開し、各種国際貢献を実践し、また僧侶となり自己と対峙、「二足の草鞋、あぶはち取らず」的生き方をしてきました。良く言えば多面体という意味で「ダイヤモンド的人生」です。ほんわかほんわか。

そんな方はあまりおられないので、変人と言われながらもヨチヨチやってきました。起業した会社を上場企業に育てあげ、保存に協力したキジル千仏洞は世界文化遺産となり、給付型奨学金や博物館建設、自己を求めて念仏行脚日本縦断、といった具合です。大したことではありませんが、マルチステージであることに違いありません。

多くの皆様のおかげです。ありがたいことです。興味おありの方は『ありがとう人生燃えつき店じまい』(東方出版)を笑覧くださいませ。アマゾンでは定価の約十分の一300円!! 嗚呼!! ほんわかほんわか。

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小僧落書き、背景の像はキジル千仏洞の羅什さん(撮影:筆者)

我が300円人生で、心がけてきたのは「今ここ自分」です。存在するのは今、存在するのはここ、存在するのは自分。今をしっかり生きたい。ここでしっかり生きたい。自分がしっかり生きたい。明日や彼方、他人に求めるのでなく、「今ここ自分」こそが我が300円人生。仏教の教えでもあります。

教授は「先進国で長寿化が進み、日本では2007年生まれの半数は107歳まで生きると予測している」そうです。スゴイ!ビックリ!するような話ですね。ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。