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国献男子ほんわか日記44 トンがって、世界へ

国際協力実践家 小島康誉

長久保赤水(1717-1801)という人をご存知ですか。江戸中期のトンがった方です。現在の茨木県高萩市の農家に生まれ、伊能忠敬より42年前に実測せずに日本地図「日本輿地路程全図」を完成させ、「日本地図の先駆者」とされる方です。水戸藩主へ講義する侍講にもなりました。農民から侍講となったのは例のないことだそうです。

私はまったく知りませんでした。ネットサーフィンしていて知り、日比谷公会堂での展示会を2回観てきました。そのパンフレットに馬場章元東京大学教授により「国際人の先駆け」と紹介されています。それによると「ドイツ、オランダ、イギリスの各地に伝来するシーボルトの膨大な日本コレクション。赤水図はアメリカ、フランス、ロシア政府にも渡って、日本に関する貴重な情報源となっていた。鎖国時代に赤水自身は海外に渡ることはなかったが、彼が製作した日本地図を通じて、確かに国際人だったのだ」と。

また会場パネルには「水平線からの北極星の角度、先人の地図や地誌、官製国絵図などをもとに20年以上かけて作成した。刊行日本図としては初めて経 緯度と緯度の数値が記載された。改訂版が度々売り出された。精密な伊能忠敬図は江戸幕府により秘匿され、赤水図が庶民に広く活用された。吉田松陰も『これがなくては不自由』と現在の約4560円で購入した」などと説明されています。

韓国に実効支配されている島根県竹島が明記されていることでも注目されています。日本地図だけでなく中国や世界地図も作成。伊能忠敬をして「測量せず、いながらにして地図を作成したのは非常に感心する」と言わしめた彼はよほどトンがっていたのでしょう。

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長久保赤水作成日本地図と自画像(上記展示会にて撮影:筆者)

世界は運命共同体、21世紀は国際協力の世紀、横並びでなくトンがって世界へ。「若者の海外行き後押し、学期中でも出席扱い」との読売新聞(2018.07.27)によると日本人の出国者数は増加傾向にあり1996年1669万人から2016年1712万人へ増加しているものの、20歳代は463万人から300万人に減少。日本政府が海外渡航する若者を増やすために官民合同で対策協議会を設置し、教育機関や企業に若者が渡航しやすい環境の整備を促すとのことです。

教育機関といえば、京都学園大学が来年から京都先端科学大学へ名称変更するとの全面広告を読売新聞に3日連続。そのひとつのキャッチコピーが「トン がった人にしか、見えない世界がある」(2018.07.02)。私財100億円を寄付し理事長に就任した永守重信日本電産会長兼社長、「10年で私学 トップになる」と矢継ぎ早に改革、トンがっていますね。私が昨年と今年、講義させていただいた名古屋外国語大学では海外留学費用の全額を大学負担とか。こ れもトンがっていますね。

前回までに紹介してきたCampbell La Pun氏も奥田透氏もトンがって世界で活躍しておられます。ニューヨークから戻ると畏友から「ネパール大地震の支援最終打合せで出かけます」と便り。当時は盛んに報じられた大地震、今も応援されているってトンがっていますね。またニヤ調査隊員であった小野田豪介さんから「昨年冬、再建したネパールの小学校にトイレを造りたいので、皆様のご支援を」とのトンがった便り。やりくりして貧者一灯送金。そして畏友女史からは小僧に「トンガリ先生へ」と暑中見舞い、ありがたいことです。頑張ってトンがります。「中国新疆で国際貢献なんて」と変人扱いされながら。

旅を続けて

毎日ご苦労さまです。お忙しいことでしょう。次々と起こる災害、異常気象の地球、人類への警鐘でしょうか。一庶民の私は自戒しつつ生きています。人生航路を続けています。イヤなこともいっぱいありますが、笑って笑って暮らしています。ほんわかほんわか。

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小僧落書き:背景はニューヨーク7番街(撮影:筆者)

いろいろありますが希望に向かって生きています。使命をしっかり抱いて漸進しています。当面はニヤ調査30周年記念として、キジル千仏洞保存協力やダンダンウイリク遺跡調査などをふくむ活動記録写真集の10月出版。隊員諸氏からの寄稿もえて。中訳・英訳のご尽力もいただき。東方出版の世話になりながら。写真・資料のレイアウトも決まりました。本号がリリースされる頃には初校を終えていることでしょう。そして9月は奨学金授与などで新疆再訪の予定です。困難な外国との活動……壁にぶつかりながら人生行脚を続けます。聖人君子でない庶民はヨチヨチと脱線しながら旅を続けます。皆様に助けられながら。嗚呼ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。