VOICE

国献男子ほんわか日記50 シルクロード:美の道・壁画の道

国際協力実践家 小島康誉

今年3月、新疆文物局で王衛東局長らと打合せた活動のひとつに、佛教大学四条センターでの連続講座があります。ニヤ調査30周年記念の関連活動です。佛教大学の安藤佳香教授が企画し、11月から来年3月迄の5回シリーズです。

そのトップバッターとして11月5日、私が「鉄線描×屈鉄線×文化財保護」と題して講演。焼損した法隆寺金堂「鉄線描」壁画とダンダンウイリク遺跡「屈鉄線」壁画をPPTで紹介し、「文化財保護」の重要性を訴求しました。

来年は法隆寺金堂壁画が焼損して70周年。法隆寺金堂旧壁画はしなやかで力強い「鉄線描」手法で描かれています。その源流の実物資料ともいえる「屈鉄線」手法で描かれた壁画を2002年に私たち日中隊が新疆タクラマカン沙漠ダンダンウイリク遺跡で発掘しました。

“

両者の類似性を報じるNHK「シルクロード・壁画の道をゆく」より

両者にどんな関係があるのでしょう。井上正佛教大学教授(故人)は「法隆寺壁画は西域風の線描の影響を受けているといえる・・・弾力性に富んでいて 穏やかな線。どのように伝わったかは断言できないが、尉遅派の絵が中国で流行っていた時期と、法隆寺壁画が描かれた時期がかなり近いと考えられるから、尉 遅派の絵師を直接招いたこともありえたのではないか」(『新シルクロード2草原の道風の民・タクラマカン西域のモナリザ』(日本放送出版協会2005)と推測されています。

2015年、法隆寺は「焼損した金堂壁画の本格調査を行い焼損70周年の2019年に中間報告の予定」と発表。中間報告が待たれますね。そして焼損壁画の一般公開も期待したいですね。再建された金堂には模写が展示されています。

法隆寺「鉄線描」壁画が注目されればされるほど、その源流の実物資料ともいえるダンダンウイリク遺跡「屈鉄線」壁画群の重要性は高まることでしょう。

壁画といえば、安藤教授と私が新疆亀茲研究院と交わした「キジル・シムセム両石窟壁画共同研究協議書」により、安藤教授が先月、両石窟で壁画研究。 言葉の違いや砂嵐と雪に遭遇するなど苦労されたそうです。帰路、新疆博物館で開催中の「ニヤ・考古・物語-中日ニヤ考古30周年成果展」を参観され、「出 土品も展示も素晴らしい。小島先生の大きな仕事に改めて感じ入った。5時間熟覧、なお後ろ髪ひかれる思い」と有難い感想が寄せられました。

平和を守る一環としての国際協力

この部分はBBCとCNNを見ながら書いています。1918年11月11日午前11時、第一次世界大戦の休戦ラッパが鳴り響きました。4年間で約1800万人が犠牲になられました。日本も日英同盟により連合国側で参戦。100周年の記念式典が生中継されています。

パリ凱旋門での式典には約70ヵ国の首脳が参列、マクロン仏大統領夫妻・麻生副総理・メルケル独首相ら。トランプ米大統領夫妻とプーチン露大統領は 遅れて到着。マクロン大統領は各国首脳を前に「愛国心とナショナリズムとは正反対だ。我々は恐れでなく希望を築くべきだ」と挨拶し、各国に国際協調の重要 性を訴えました。

ロンドンではエリザベス女王が見守る中、チャールズ皇太子・メイ英首相・シュタインマイヤー独大統領らの献花が続いています。敵国ドイツの指導者が この式典で献花するのは初だそうです。凱旋門では100年前の休戦時に使われたラッパが鳴り響き式典は終わりました。降りしきる雨の約1時間半。私は胸に つけている赤いポピーに手を合わせました。

ニヤ調査30周年記念『中国新疆36年国際協力実録』は好評ですが、中には「何で中国なのか」「新疆はいろいろ問題あるのでは?」「国際協力と平和が関係あるのか」といったお声もいただきました。100周年追悼式の報道を答えとさせていただきます。

信じて信じきらず

人間社会は信頼で成り立っています。と信じたいですね。と信じられないことが次々と起きる昨今。信じても100%鵜呑みにしないことが大切ですね。実例をひとつ。PCが極端に遅くなり、量販店へ持ち込むも直らず、やむなく新品購入。

以前と違った検索サイトが入っていて、自動的に居住地の天気予報。「東京都, 香南市」と。クリックすると、東京都港区の天気予報詳細。「香南市」を調べたら高知県でした。どうも「港南」の間違いのようです。さらに「小島康誉の画 像」には見たこともない女性・男性の写真ばかり、小僧はまったく登場せず。俺もついに性転換したか。以前のPCで自動的に開いたYahoo! Japanではズラーと私の写真が出たのに。摩訶不思議!ほんわかほんわか。

“

小僧落書き:背景は京都・広沢の池(撮影:筆者)

PCそのものでなく、検索サイト側の問題でしょうね。やがて訂正されるでしょう。信じて信じきって生きていきたいですが、信じて信じきらずですね。嗚呼ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。