VOICE

国献男子ほんわか日記55 中国中央TV「国家宝蔵」に「五星錦」登場

国際協力実践家 小島康誉

私たち日中共同ニヤ遺跡学術調査隊が1995年10月、新疆タクラマカン沙漠ニヤ遺跡で発掘した「五星 出東方利中国」錦肘当てはこれまでも幾多の栄誉に輝いていますが、今年1月13日またまた輝きました。中国中央テレビ日曜夜ゴールデンタイム90分の大型 人気番組「国家宝蔵」で大々的に放映されました。

番組は一昨年12月から始まり、故宮博物院・上海博物館・南京博物院など9館収蔵の重要文物各3点を紹介。学芸員が専門知識で説明する従来の文化財 紹介番組と異なり、俳優が歴史上人物を演じドラマ化して紹介、博物館長や一般人なども登場し、中国版「ナイト ミュージアム」とも称され人気を呼びました。ホストは著名俳優の張国立氏。

大好評にこたえてシーズン2が昨年12月から始まりました。1月13日新疆ウイグル自治区博物館収蔵「五星出東方利中国」錦がトルファン出土「絹絵彩絵木俑」「伏義女媧図」とともに登場。「伏義女媧図」部分ではウイグル族俳優尼格買提・熱合曼さんが活躍。

「五星錦」部分では92歳の俳優藍天野氏(故・平山郁夫先生そっくり)が武将に扮し活躍、「五星」が勝利をもたらします。20世紀中国考古学上最も 偉大な発見のひとつと。于志勇新疆ウイグル自治区博物館長(ニヤ調査中国側第二代学術隊長)が「日本と共同で調査」などと発見状況を説明、日中隊の写真も 出てきます。キジル千仏洞壁画も少しだけ登場。旧友の趙豊中国絲綢博物館長が複製品作製過程を紹介。若者中心の観客から拍手や笑いがたびたび出ていました。

“

中国中央テレビ「国家宝蔵」で「五星錦」を背に語る張国立ホスト(Web放映を撮影)

“

左:「五星錦」発見状況を紹介する于志勇新疆ウイグル自治区博物館長(Web放映を撮影)
右:「五星錦」を含む王墓発見状況(中央が筆者:『中国新疆36年国際協力実録』81頁より)

“

藍天野氏がこの後に武将を演じる(Web放映を撮影)

“

左:藍天野氏演じる趙充国将軍(Web放映を撮影)
右:張国立・藍天野両氏に「五星錦」複製過程を説明する趙豊中国絲綢博物館長(同上)

畏友・段躍中日本僑報社編集長は「14億人中、数千万人は見たのでは」と。私が見たWeb動画でさえ18日午前10時時点で416.3万回再生と表示されていました。

これはスゴイことではないでしょうか。中国で圧倒的影響力をもつ中央テレビ日曜夜7時30分から21時までの「国家の宝物蔵」と名付けられたシリー ズ番組で大きく取り上げられ、「日本との共同調査」「20世紀中国考古学上最も偉大な発見のひとつ」などと報じられたことは「五星錦」だけの栄誉にとどま らず、私たち日中共同隊の栄誉であり、今後その波及効果が広がっていくことでしょう。なお発見経過などは拙著『中国新疆36年国際協力実録』で詳しく紹介しています。

番組は人民日報Web「人民網日本語版」で「文化財紹介する番組“国家宝蔵”が大ヒット 博物館が人気観光スポットに」などと報じられています。日本の博物館やテレビ関係者もこのドラマ仕立て文化財紹介手法に注目しているのでは?

さて、平成31年、西暦2019年早くも1ヵ月が過ぎようとしています。ちなみに今年は昭和94年、大正108年、明治152年、皇紀2679年です。

沢山の方から年賀状をいただきました。ありがとうございます。切手部分は干支の「亥」が富士山に駆け上がるデザインや門松に「亥」扇が飾られたものなど。イノシシといえば猪が普通で、「亥」はあまり使わない字ですね。

中国の友人たちからは「豚」デザインの年賀状、上海在住の松田奈月さんからは「豚」飾りと日めくりが届きました。ありがとうございます。干支は中国 起源で5世紀ごろ日本へ伝わったとか。それなら同じ動物のはずですが、十二支の中で、「亥」だけが中国では「豚」なのに日本では「猪」。中国語で「猪」は 豚を意味し、「野豚」が「イノシシ」を指すそうです。中国から各国へ伝わった干支、一部が異なる国が日本以外にもあるそうです。

“

中国では旧正月「春節」(今年は2月5日)前後に大型連休・「猪」飾り(撮影:筆者)

なぜ「豚が猪にかわったか」は専門家に任せるとして、国によって異なる一例ですね。民族・歴史・文化・体制・法律など国によって違いがあります。 21世紀に入り世界の一帯化が急速に進んでいます。世界中が各種の電子網で瞬時につながる時代となりました。一方で対立は激化しています。21世紀は国際 協力の世紀ともいわれています。しかし相互理解は容易ではありません。容易でないからこそ相互理解を促進する諸活動を展開したいものです。中国側と実践し てきた共同活動の成果の一部が上記「五星出東方利中国」錦の発見です。

そこそこ

私は欲張りです。これもあれも欲しい、ああもこうもしたい、刻一刻と欲が湧き出てきます。困ったものです。一方で、「そこそこ」で良いじゃないか、「そこそこ」で十分だ、と自重力も働きます。ほんわかほんわか。

欲も大いに結構ですよネ。写真の小樽へ来られたのも「欲」のおかげ。オマケ欲しさで苦労して貯めたマイルが期限切れ直前となり、北海道地震微力応援 購入すべくフライト確保し鵡川(むかわ)へ。さらにカード会社から届いた宿泊サービス券で札幌泊。そして♪粉雪まいちる小樽の駅に…やって来ました。おか げで政寿司の絶品「にしん」が味わえました。欲もありがたいものです。これからも「そこそこ」欲張って、「そこそこ」我慢して生きていきます。

“

小僧楽書:背景は雪ふりしきる小樽駅前(撮影:筆者)

ニヤ調査に7回参加の隊員(現大阪大学教授)から拙著『中国新疆36年…』への感想とともに「ほんわか日記を拝見。充実した内容ですね。小島さんの 活躍や熱意、ユーモアや人生観が垣間見られます。なんとも世知辛い世の中で、今後も活躍を期待します」と嬉しいコメント。また社長時代の社員から妻への年 賀状に「久しぶりにほんわか日記を見ました。今までは何気なく見ていたけれど、小僧落書きコーナーとても良いです。元気になれます」と。なお今回より小僧 楽書としました。松田奈月さんからヒントいただき。ありがとうございます。嗚呼ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。