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国献男子ほんわか日記63 世界遺産「烽火台」は愛も伝えたか?

国際協力実践家 小島康誉

NHK「シルクロード・壁画の道をゆく」が好評で、4月30日またまた再放送されました。法隆寺・敦 煌・キジル千仏洞・ダンダンウイリク遺跡の壁画を取り上げた番組です。中島木祖也エグゼクティブ・プロデューサーの依頼で、キジル・ダンダンウイリク部分 は私が新疆文物局との交渉を仲介、出演もしました。その際、特別許可(許可証は『中国新疆36年国際協力実録』53頁に掲載)を得て撮影したキジル212窟のデータと壁画を持ち帰ったドイツ隊が残した写真(壁画は第二次世界大戦で焼失)を基に、東京芸術大学がクローン復元展「素心伝心」を開催しました。

そのキジル千仏洞とともに世界文化遺産となったのがクズルガハ烽火台です。烽火台なんて日本ではなじみない名称ですね。「のろし」と打つと、狼煙、 烽火と変換されます。木や草などを燃やし煙で情報を伝えた通信施設が烽火台です。日本では664年新羅の侵入に備え、対馬・壱岐・筑紫においたのが最初と Webにのっています。狼煙は戦国時代にも使われました。

能登半島の北端・珠洲市には狼煙町があります。沖を通る北前船を難破させないように狼煙をあげていたことに由来するとか。また「反撃の狼煙をあげる」「革命の狼煙をあげる」といった慣用句もあります。烽火台は大昔のスマホだったともいえます。愛も伝えたのでしょうか。

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クズルガハ烽火台を写す筆者ら(『中国新疆36年国際協力実録』より 撮影:楊新才氏)

クズルガハ烽火台は中国新疆ウイグル自治区クチャ北西約12㎞に残存しています。日干し煉瓦を積み重ねて築かれました。現在の高さは約13m、当初 は18mほどと推測されています。上部への階段は年月をへて崩れ落ち写真のように烽火台根本部分にわずかに残っています。ここ以外にも漢~唐代に15㎞ほ どの間隔で築かれ、シルクロードには崩れかかったいくつもの烽火台が残っています。

この烽火台の近くにはクズルガハ千仏洞があります。これらを参観してキジル千仏洞へ向かうのがクチャ観光の一般的ルートです。機会があればお出かけいただき烽火台が愛も伝えたか推理してみてください。

奉祝 天皇陛下御即位記念乗車券

新元号「令和」が中国で昨年10月に日本酒などの商品名として商標登録されていた、商標ビジネスをやっている人がいろんな字を組み合わせて600ほ ど登録、「令和」も8,000人民元(約13万円)で販売されているとテレビ報道。日中間の“妙な問題”になるのを避けるため、親友中国人に「買って」と 依頼。買えるやら?と前回書きました。

その続きです。親友より「平成」最後の日に連絡。ネットで「買う」とクリックしたら9,800人民元と表示された、弁護士通じて振り込んだ。しかし 暫くしても当人と連絡が取れない、一端返金してもらった、「令和」になる5月1日以降に動きがあるかも、進展あったらまた連絡する、「令和」発表の4月1 日以降に「令和」とか「令和〇〇」が各種分野で1276件も申請されているのには驚いた、登録されるかは不明。以上が友人からの報告です。

凄いですね。「日中関係好転に水が差されるのを避けるため、買い交渉を継続して」と頼みました。どうなりますか。買えるやら? 進展あればまたお知らせします。

5月1日「令和」改元。記念行事が盛沢山。東京メトロは「奉祝 天皇陛下御即位記念乗車券」を発売。ネットに早くもオークション、中にはゾロ目乗車券開始50,000円、201,951円なら即決と(5/6検索)。凄い世の中ですね。

小僧も購入しました。その販売方法が面白いので、紹介します。皇居前の千代田線「二重橋前駅」で1日から1枚1,000円で5,000枚限定販売。 8時販売開始、9時頃行くも長蛇の列。まずは購入予約券をもらってと。並んで入手。「10枚下さい」に「1回1枚」と。また並び1枚もらい、また並び1枚 もらい……。暫く後ろで5,000枚分終了。帰ろうとすると見ず知らずの婦人「めでたい日に坊様に会えたのは嬉しい!」とお布施いただく。「財宝二施 功徳無量…」と唱え合掌するばかり。

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記念乗車券(表・裏・カバー)と購入予約券

小僧入手の購入予約券は18~20時分。皇居前広場で表敬しいったん帰宅。記念にスキャンしようと並べるとナント11枚。密着していたようで感謝。18時前に行くも行列。番が来て予約券と11,000円出し「11枚下さい」に「1回1枚」と。

ビニール袋から出し「紙カバーの表に汚れ有りませんね」「有りません」、ひっくり返して「裏に汚れ有りませんね」「有りません」、紙カバーから乗車 券を出し「表に汚れ有りませんね」「有りません」、ひっくり返して「裏に汚れ有りませんね」「有りません」、やっと1枚購入。また並び汚れ確認後1枚購 入、また並び汚れ確認後1枚……。「汚れ確認は結構です」と言っても「決まりですから」と。日本人らしい繊細さ! 友人へ贈呈しました。

ようこそ欢迎Welcome

日本最大の観光地である京都で、異変が起きています。日本人観光客が4年連続減少と京都新聞電子版(4/21)が報道。それによると「外国人客激増による交通機関の混雑、ホテルが取りにくい」などが原因のようです。

私は佛教大学で学び、知恩院などで修行し、シルクロードの文化財保護研究の拠点を佛教大学に置いている関係で、30年以上京都へ通っていますので、その変化は肌で感じています。中国人・韓国人が中心でしたが、東南アジア諸国や欧米人も急増しています。

この数年はホテル建設ラッシュ。そして民泊急増。一時は取りにくかった予約もそれほどでもなくなりました。一方、団体でバスに大きなスーツケースを 持ち込む、ゴミを捨てる、立入禁止区域へ入る、深夜まで騒ぐ、テレビの音が大きすぎる、子供が廊下を走り回る、チエックアウト後の部屋がグチャグチャ、貸 衣装でも地面に座り込む、客待ちバスが長時間駐車……などの苦情がアチコチで。

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小僧楽書:背景は京都渡月橋、貸衣装屋さんも大変(撮影:筆者)

文化の違いは中々難しいですね。でも相互理解促進には交流が第一歩。多少のことは目をつぶり、歓迎したいですね。生きてゆくうえでも何事も受け入れ、「ようこそ欢迎Welcome」精神でヨチヨチ歩きの小僧です。ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。