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国献男子ほんわか日記93 国際協力 その心は?

国際協力実践家 小島康誉

私は多くの方のご指導ご協力をえて、シルクロード新疆ウイグル自治区で国際協力を実践してきました。 1982年から38年にもなります。その舞台が中国新疆であるため、「変人」と言われたこともあります。昨今では少数民族がらみのニュースもあり、なおさ らです。これがアジア・アフリカ・南米の小国での国際協力なら「美談」と言われるでしょうが、中国・新疆であるため「色眼鏡」で見られます。「嫌中派」か ら「日本人か!」と詰問されたことも。日本には「嫌中・反中派」、中国には「嫌日・反日派」もおられる。

その国際協力はこの「国献男子ほんわか日記」、その前身「シルクロード国献男子30年」や「一帯一路実践談」、そして写真集『中国新疆36年国際協 力実録』などで紹介してきました。が、日常生活から離れた活動であり、有名人でもない庶民の発信であり、それほど知られていません。愛読いただいている貴 方様に心から感謝します。ブログを掲載いただいているADC文化通信・レコードチャイナにも感謝します。

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1988年キジル千仏洞修復保存で建設中の飯場と配水塔(撮影:筆者)

これまで実践してきた活動をまとめれば、世界的文化遺産保護研究方面では、開始28年後に世界文化遺産となった「キジル千仏洞修復保存活動」・調査 開始7年後に中国の国宝中の国宝を発掘した「日中共同ニヤ遺跡学術調査」・焼損した法隆寺金堂壁画の源流実物資料といえる壁画を発掘し保護した「日中共同 ダンダンウイリク遺跡学術調査」。

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2019年児童育英金贈呈式で挨拶する筆者(撮影:楊新才氏)

人材育成方面では、4,600人余に提供した「新疆大学奨学金」・約400人・組織へ提供した「新疆文化文物優秀賞」・1,600人余に提供した 「シルクロード児童育英金」・5校舎を建設した「希望小学校」。その他では、水改良プロジェクトや博物館建設などへの「各種寄付」・多数の「各種代表団派 遣と招聘」・多数の「各種講演・写真展・出版」・多数の「各種仲介」・数種の「档案史料出版」などです。

後半生のほとんどすべてを投じたのは、何故でしょう? 私はいわゆる「中国一辺倒派」「中国評論家」でなく、日中理解実践家・日中共同実践家です。「日中友好を基礎として、日中理解を促進し、日中共同を実践す べき」と主張しつづけています。82年に新疆を訪問したのが縁で、多民族の温かい人情と豊富な文化遺産に出会い、国際協力の重要性に気づき、実践を開始し ました。国際協力は人類「共生」の実践です。

シャンシャン中国帰国1年延期希望:TVや新聞が「新型コロナ禍で休 園していた上野動物園が約4ヵ月ぶり再開、バンダが大人気。上野生まれのシャンシャンは契約により、年内には中国へ帰される予定」と。日中理解実践家とし て、帰国延長を希望します。契約は重要ですがコロナ禍で公開されなかったから、理由はつけやすいのでは。中国側は既に検討を開始しているかも? 実現すれば日中理解が一層進むことでしょう。神戸王子動物園のタンタンも帰国延びると良いですね。

その心は? 差別しない 全ての縁に感謝

米ミネアポリスで黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官により拘束死させられた事件をきっかけに、人種差別反対が大きなうねりとなり、各国でデモや銅像破壊などが起きています。片膝をついたり、握り拳を突き上げたりする場面が印象的ですね。

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小僧楽書:拙著『念仏の道ヨチヨチと』(東方出版2006)より

米国の白人社会でもWASPと略される、White Anglo-Saxon Protestantが力も有していると企業経営時の度々の訪米で感じました。中国での遺跡調査でも民族差を感じました。英国は今も爵位制度が残ってい て、上院にあたる貴族院さえあり、階級社会が色濃いとスタイン第四次新疆探検資料研究でオックスフォード大学などを訪れた際、実感しています。

人類の歴史は差別の歴史といえるほど、昔も今も世界中で各種の差別や偏見が。人種間・民族間・国家間・男女間・年齢間・出自間・特徴間・学歴間・個 性間・体型観・思想間・職業間・職能間・貧富間・官民間・宗教間…。日本国内でも同様ですね。前回「次ぎは白老町『ウポポイ』へ行くゾ~。『先住民族アイ ヌの歴史と文化を主題とした日本初…民族共生象徴空間』。オープンしたら国際協力に通じる『共生』精神を学びに…」と記しましたが、アイヌのみならず一部 の職業・出自の方や在日外国人などが差別されてきたのは残念ながら歴史的事実です。

池袋で赤信号を無視し車を暴走させ、横断歩道を渡っていた母子を死亡させ、多数の人に重軽傷を負わせた男が逮捕されなかったのは、「工業技術院元院 長」で「瑞宝重光章受章」の「上級国民」だから一般国民と差がついたとの意見がネットなどにあふれたことも。その叙勲制度にしても差別的。特別の貢献もな いのに、大臣経験者は○○章、裁判官経験者は○○章、大学長経験者は○○章、歌舞伎役者は○○章…と指定席的。報酬えての仕事にすぎないのに。公務員が7 割とか。やがて廃止されるでしょう。

今日もTVで美白化粧品や育毛剤など外見「修正」品CMが大量に流れています。修正しまくり芸能人のポスターがあふれています。なぜ美白に憧れるの か? その根底には白人願望意識があるのでは? なぜ髪フサフサを求めるのか? そこには高齢者軽視意識があるのでは? これらは一例ですが、新聞・TV・ネットなどにあふれる外見蔑視的広告は、差別や偏見を助長しているのでは?

人類77億人は助けあって、約200の国家は協力しあって、共に生きたいですね。さらには動植物や環境などとも活かしあいたいですね。全ては繋がっ ています。縁はグルグル回っています。国際協力の心は「共生」「縁つなぎ」。全ての縁に感謝して生きていきます。以上、色黒・小柄・短足・剃髪・腹黒の小僧でした。ほんわかほんわか(07/01記)

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。