軍事的な威圧でもなく、強硬な外交でもない。外国の政治、経済、学術などあらゆる面に入り込み、じわじわと外国の社会に「中国基準」を吹き込んでいく。近年中国ウオッチャーたちが、「ハード（軍事）パワー」「ソフト（文化）パワー」とは違う新たな力、『シャープパワー』と呼ぶ動きです。

その動きが最も顕著なのが、オーストラリア。昨年末、その象徴的な事件が起こりました。中国に有利な発言をしていた政界の若手ホープ、ダスティアリ議員が、中国系企業から資金援助を受けていたことが発覚。豪政界に激震が走りました。この事件によりオーストラリア国内は、中国に対して一気に警戒感が高まったのです。

この状況の中、10月、タスマニアで地方選挙が行われました。州都ホバート市では、初の中国系議員の誕生を目指す女性候補が登場。ここに20年暮らすヨンベイ・タンさんです。この数年で倍増する中国系コミュニティーを支持基盤に精力的に支持を訴えていきます。公約は、南極の拠点基地としてのホバートの発展です。一方、緑の党所属のビル・ハービーさんも立候補。市議4期目を狙います。ハービーさんは、南極調査の拠点化として町の開発を訴えるタンさんの背後に北京中央の影があるのではないかと警戒、市民に訴えていきます。

番組では、南極に近いタスマニアで行われた地方選挙に密着。中国系移民との激しい攻防にカメラを向けました。

語り：出田奈々

プロデューサー：永野浩史