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国献男子ほんわか日記13 国際協力実践10カ条

国際協力実践家 小島康誉

このWebを笑覧いただきありがとうございます。掲載いただいているADC文化通信にも感謝いたします。私は30有余年、中国西部の新疆ウイグル自 治区で一庶民ながら国際協力を実践してきました。Webでも紹介してきた世界的文化遺産保護研究・人材育成・相互理解促進の三分野での約100項目です。

日中協力してのこれら活動。政治体制をはじめとして、民族・言語・思想・文化も大きく異なり、ギクシャク関係が続いている中国で、しかも種々の事件 が度々報道される多民族地区での活動はそれなりの苦労もありましたが豊富な成果をあげることが出来ました。この機会に日中双方の多くの方々へ改めて心から の感謝を表します。

国際協力活動が外交官や政治家だけの役割(それは報酬をえての仕事であり当然のこと)と捉えられ、あるいはNGO活動は認知されているものの、個人 での国際協力はまだまだ多くありません。国内で「反中」「反日」を叫んでいるだけでは相互理解は図れません。理解促進を続けてこられたのは私なりの国際協 力実践10ヵ条を大事にしてきたからと思います。

使命感をもつ=何のために国際協力するのかを明確に自覚してきました。あらゆる分野で異なる外国での国際活動では大小様々な衝突があります。そのような際に双方が立ち戻る原点が使命感。基本理念の明確化。意義・目的・目標を明確にしてきました。

国益意識をもつ=国益意識強い中国で国際協力を続けるには当方もその意識をもつことが重要です。中国人から「中国が好きな日本人は多いが、中国一辺倒の日本人は妙だと思う。貴方は親中派だが意見をハッキリ言うので長く付き合っている」と言われたことも。

握手する=国際協力の基本は相手国の主権・法規・文化の相互尊重です。反対意見があっても、まずは握手して聞くように心がけました。握手は相手を尊重し話し合うことにつながります。困難な状況下でも笑って対応しました。

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天下和順を願って誦経(楼蘭にて撮影:楊新才氏)

主張する=先方の主張を聞いたのちに、主張すべきは大いに主張しました。その場合も相手の感情の機微をとらえるよう努めました。相手の発言を分析し同意できる事項から回答し、同意できない事項は婉曲的であっても明確にその旨を伝え、対案を主張しました。

理解する=世界には約200の国家があり、それ以上の民族がいます。それぞれの歴史・体制・制度・文化・言語などは異なります。当然その立場も異なります。双方が理解しあうことは中々難しいことです。理解しようと努力することが重要だと思います。

計画する=PLAN・DO・CHECKはすべての基本。長期・中期・短期計画を作成し臨みました。日本側はもちろんのこと中国側へも配布。公開も計画に組み込み実行しました。プレスリリース・報告書・シンポジウム・写真集・講演・Webなどで。

組織する=活動にふさわしい高レベルの研究者・撮影技師・測量技師・保護技術者…を組織しました。超多忙にも関わらず参加いただき、大部の報告書作成にも膨大な時間を費やしていただいた。感謝するばかりです。活動資金調達では今も苦労しています。

我慢する=外国は異国です。立場が異なるのは当然のこと。国際協力は外国が主舞台ですから、先方の意向を重視する必要があります。日本流だけでは進みません。強靭な精神力・体力・協調力がないと耐えられません。

継続する=中国が独特の国であることは度々報じられています。投げ出したくなる事も多々。その度ごとに「大きな愛に境界はない」「大愛無疆」「Random Acts of Kindness」精神で継続してきました。実践が実績を生み、継続が信頼に結びつきます。

感謝する=国際協力も極言すれば「人間力」が決め手でしょう。相手との縁をありがたく頂き、相手への感謝をもち、義理と人情で接し、口や頭だけでなく心で行動するように努めました。科学技術がいかに発展しようと人と人の信頼こそが国際協力の決め手です。

なお詳しくは「実践的国際協力学-新疆での35年から」(『佛教大学宗教文化ミュージアム研究紀要』第13号2017)で発表していますので、検索くださいませ。

四苦八苦また楽し

人生、四苦八苦の連続ですね。生・老・病・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦。生も老も病も死も苦しみですね。愛する人ともいつかは別れ なくてはならない、憎い人とも会わなくてはならない、求めるものも得られない、生きているかぎり思うようにはならない、も苦しみですね。煩悩は108ある とか。四苦八苦を掛け算すると4×9+8×9=108。

でも考え方次第では? もしこれらが無かったら人生は無味乾燥では? と、言ったって、そんな心境になれるもではありませんね。ほんわかほんわか。

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小僧落書き、背景はトム・ウェッセルマン※の作品(撮影:筆者)

四苦八苦と日々格闘しながら、四苦八苦また楽し、と時には思う小僧です。4・9・8・9を「よく焼く」と読んで、パン屋さんなどでは好まれる場合もあるとも聞きました。ほんわかほんわか。

※Tom Wesselmann(1931-2004):アメリカシンシナティ生まれ。ポップ・アートの代表的アーティストのひとり。アメリカンライフの日常の中に裸婦を明るく単純な色調で表現し続けた。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。