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国献男子ほんわか日記49 ニヤ遺跡調査30周年記念本、いよいよ出版

国際協力実践家 小島康誉

まず第48回で報告しました「ニヤ遺跡調査30周年展」の続きです。上海在住で、NHK「シルクロード・壁画の道をゆく」のコーディネーターも務めた松田奈月氏から「今は敦煌周辺で新番組の撮影中。ニヤ調査30周年文物展のニュースWebで拝見。長年中 国で仕事しているが、日本人の活動、しかも新疆での活動がここまで公式に報道されるのを見たことがありません」と。

報じられているのは知っていましたが、そんなに沢山?と中国の検索サイト「百度」を開いてビックリ。冒頭に281000件と表示、ナントナント。転載ふくめてでしょうが驚きました。日本の文化庁に相当する「国家文物局」Webには「我が国の改革開放40周年と中日共同ニヤ調査30周年を祝い、開幕した」と。「亜心网」には初日8000人以上が参観したと、ありがたいことです。数十件開き諦めました。「尼雅考古30周年」で検索してみてくださいませ。

さて、『中国新疆36年国際協力実録』が 出版となります。これも3月に新疆側と合意したニヤ調査30周年記念活動の一部です。4月編集に着手。ニヤ遺跡調査を中心に、そのきっかけといえるキジル千仏洞修復保存協力、ニヤ調査の後継ともいえるダンダンウイリク遺跡調査、そして奨学金など関連活動と国際協力の意義なども含んでいます。大量の写真や資料から選び出した約840点、日本語のほか中国語と英語も併記し、A4版オールカラー270頁です。中訳・英訳は周培彦・高田和行両氏にお願いしました。 感謝しています。

私が基本デザインをPPTで作成し、装丁などは濱崎実幸氏が担当、東方出版の今東成人会長らに尽力いただきました。調査隊員の吉崎伸・浅岡俊夫・田中清美・安藤佳香各氏からはエッセイを寄せていただきました。ありがたいです。初公開の写真・資料も多く含んでいます。30年前のニヤ調査第一次隊日本出発は10月29日。その日前の刊行を目指してきましたが、少し遅れての出版となりました。校正を手伝ってもらった妻から「もう76歳、これを最後の本とし なさい」と言われました。

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表紙・ダンダンウイリク遺跡発掘壁画の保護と模写

グローバル化が進み、一国だけでは生き残れない時代です。しかし、外国との交渉は容易ではありません。本書が長年にわたる日中国際協力の真実の記録として評価されるものと期待しています。日中平和友好条約40周年に相応しい出版となりました。日中双方多くの方々のご指導ご尽力をえた諸活動の結果です。

ここまで成果を上げえたのは、1982年新疆訪問以来、日中双方が目的意識をしっかり持って実践し続けてきたからでしょう。キジル千仏洞修復保存協力では「人類共通の文化遺産を後世へ」を掲げ、28年後に「世界文化遺産」となりました。ニヤ調査では「友好・共同・安全・高質・節約」を掲げ、7年後に「中国の国宝中の国宝」を発掘できました。ダンダンウイリク遺跡調査でも「友好・共同・安全・高質・節約」を掲げ、法隆寺金堂「鉄線描」壁画の源流の実物資料ともいわれる「屈鉄線」壁画を発掘しました。奨学金などでは「大きな愛に境界はない」を掲げ、豊富な成果をあげています。感謝するばかりです。

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ニヤ調査1990~92年部分

国際協力などというと、普段とかけ離れた活動かもしれませんが、外国との相互理解を促進し、平和を守る一環でもある国際協力の一例として、また「こんな生き方もあるのか」「中国の奥地新疆ウイグル自治区で頑張っている日本人もいるのか」と笑覧いただければ幸いです。SNSなどで紹介いただければ望外 の喜びです。今回分がリリースされ暫く後には主要書店に並ぶことでしょう。

本書では格段の尽力をいただいた故人、塩川正十郎財務大臣・上村晃史上村工業社長・水谷幸正佛教大学学長・田辺昭三京都造形芸術大学教授や中国側諸氏に「献辞」しています。井ノ口泰淳龍谷大学名誉教授が10月17日遷化されました。世寿97歳。日中共同ニヤ遺跡学術調査の日本側初代学術隊長として、一門多数を率いて1990年より5回にわたり参加いただき、カローシュティー文書研究や第一次報告書刊行など尽力いただきました。その優しいお人柄は多くの人から慕われました。ありがとうございました。訃報に接した時はすでに印刷最終段階で「献辞」に加えることが出来ませんでした。住職を務めておられた超勝寺でお別れしてきました。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏……

脱毛よし植毛よし

地下鉄に「全身脱毛初回0円」と広告。何やら紛らわしい宣伝ですね。女性に限らず男性も脱毛する時代となりました。一方で、植毛・増毛・ウイッグのTVコマーシャルも大量に流れています。人間の欲望は様々ですね。

痩せたい人、肥えたい人。色白になりたい人、日焼けしたい人。バストを大きくしたい人、大きくて困っている人。苦痛を我慢してハイヒール履いている人、長身で困っている人。肉の好きな人、主義で食べない人。タトゥー入れたい人、消したい人。タバコ好きな人、臭いも嫌いな人。白髪染めしたい人、気にしない人…。欲望には際限がないですね。ほんわかほんわか。

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小僧落書き:背景は新国立競技場(撮影:筆者)

脱毛よし、植毛よし。人はいろいろ。それぞれにそれぞれの個性。互いの個性を尊重して生きていきたいですね。私も脱毛したいです。僧侶となって以来30年余、理容店へ行っていません。5日おきに自分で剃髪しています。1回5分程度、簡単なことですが面倒でもあります。人間は勝手なものですね。

落書き写真は毎回いろんな所で写すようにしていますが、今回は東京オリパラに向けて建設すすむ新国立競技場を一周して撮った30数枚中の一点です。

オマケのクイズ。今回の落書きの紙、仮装舞踏会の仮面のような妙な形ですね。何の廃物活用でしょう。わかる方はよほどのワイン通です。ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。