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アート鑑賞の玉手箱2 『シルクロードの現代日本人列伝』を出版

文化ジャーナリスト 白鳥正夫

「富岡製糸場と絹産業群」と同時期の6月、シルクロードの「天山回廊」も世界文化遺産登録された。そのニュースの陰で、シルクロードを旅した玄奘三蔵の精神を汲み国際貢献に尽くす日本人がいることを知ってほしい。後世に継承する文化財保護や国際交流、地道な平和活動を実践している4人が情熱を燃やした生きることの「真の意味」とは、を伝える一冊。サブタイトルが、「――彼らはなぜ、文化財保護に懸るのか?」。著者自身の体験的シルクロードの旅にも触れる。

そもそも「絹の道を世界遺産に」と着想し、口火を切ったのは、日本画家でユネスコ親善大使であった故・平山郁夫さんだった。二〇〇九年に亡くなった 平山さんは、玄奘三蔵の姿を幻想的に描いた「仏教伝来」が出世作となり、被爆画家の切なる平和への願いを絵筆に表現し、世界の文化財を守る活動に邁進された。

社長業を投げ捨て僧侶になった小島康誉さんは、新疆ウイグル自治区のキジル千仏洞の修復に私財を投じ、ニヤやダンダンウイリク遺跡の日中共同学術調査団を組織するなど約30年にわたって支援を続けている。

4年8ヵ月もシベリアに抑留された体験を持つ92歳の加藤九祚さんは、なおウズベキスタンの仏教遺跡の発掘ロマンを持続する。巨大ストゥーパの発見や発掘成果の日本での展示、著書の執筆に精励する。

玄奘の意志に導かれアフガン往還半世紀になる前田耕作さんは、悲劇のバーミヤンの再生に情熱を燃やす。ソ連の侵攻前から現地に入り、2003年から始まったユネスコの保存・修復活動の中心的役割を担う。

構成と内容は下記の通りで、カラーグラビア16ページには平山さんの絵画作品をはじめ、タクラマカン砂漠を踏破した写真家の萩野矢慶記さんの写真および小島、加藤、前田各氏からの貴重な提供写真掲載している。

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序 章 体験的シルクロードの旅 玄奘三蔵の足跡をたどる
 第一章 求法と鎮魂、玄奘の道を追体験
 平山郁夫・平和願い文化財赤十字への道
 第二章 新疆ウイグルで遺跡保護研究
 小島康誉・日中相互理解促進へ命燃やす
 第三章 ウズベキスタンで遺跡調査
 加藤九祚・90歳超えても発掘ロマン
 第四章 バーミヤン遺跡の継続調査
 前田耕作・アフガニスタン往還半世紀
 終 章 玄奘の生き方指針に平和の道へ
 それぞれのシルクロード、わが想い

『シルクロードの現代日本人列伝』(三五館、四六判、並製。本文240ページ+カラーグラビア16ページ。1500円+税)

文化ジャーナリスト。ジャーナリズム研究関西の会会員。平山郁夫美術館企画展コーディネーター・民族藝術学会会員。 1944年8月14日生まれ 愛媛県新居浜市出身。中央大学法学部卒業後、1970年に朝日新聞社入社。広島・和歌山両支局で記者、大阪本社整理部員。鳥取・金沢両支局長から本社企画部次長に転じ、1996年から2004年まで企画委員を努める。この間、戦後50年企画、朝日新聞創刊120周年記念プロジェクト「シルクロード 三蔵法師の道」などに携わる。 著書に『シルクロード 現代日本人列伝』『ベトナム絹絵を蘇らせた日本人』『無常のわかる年代の、あなたへ』『夢追いびとのための不安と決断』『「大人の旅」心得帖』『「文化」は生きる「力」だ!』(いずれも三五館)『夢をつむぐ人々』『夢しごと 三蔵法師を伝えて』(いずれも東方出版)『アート鑑賞の玉手箱』『アートの舞台裏へ』『アートへの招待状』(いずれも梧桐書院)など多数。