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キルギスあれこれ 〜「あいさつ」〜 #4 「あいさつ」
独立行政法人日本学術振興会特別研究員RPD(言語学/博士) アクマタリエワ・ジャクシルク今回は「挨拶」をテーマに書いてみようと思います。 人と会った時や別れる時に、人々は必ず挨拶します。それは挨拶には、重要な意味が込められていて、人と人の交流に欠かせないものだからです。日本では、「こんにちは」、「おはようございます」、「さようなら」などの挨拶が用いられます。それと同時に日本人は「お辞儀」をする習慣がある。では、ここでキルギスの人々はどんな挨拶をするのでしょうか?
これは、世界中みな同じで、キルギス人も「挨拶」は相手に対する気持ちや態度を表すものとして、とても大事な役割を果たします。とはいっても、細かい部分で違いがあります。たとえば、「握手」です。握手の仕方で人間関係や人々の心情が見えてくる場合があります。年上の老人に向かっては、片手で握手するのではなく、敬う気持ちを込めて両手で握手します。また、遊牧民族ならではの挨拶として、馬に乗っている人が歩いている年上の人に対して挨拶するとき、馬に乗っている人は、馬から降りて年上の人に握手して挨拶するのが常識です。馬に乗ったまま挨拶することは失礼に当たると考えられているからです。
挨拶の動作も様々です。相手と握手したり、肩を寄せ合って抱擁したり、お互いの頬にキスをしあったり、自分の胸に右手を当てて挨拶したりします。これらの動作のすべてに意味があります。上下関係や友だち関係、更に男性同士、女性同士の関係などが様々なシチュエーションで変わってきます。
祖父と孫の挨拶
年上の方への挨拶
学校にて先生と生徒の挨拶
田舎での挨拶の風景
日本語の「こんにちは」にあたる言葉で、キルギス語でもっとも一般的に使われる挨拶の言葉はСаламатсызбы?(サラマトシズブ?)「あなたはお元気ですか?」という言葉です。これに対してはСаламатчылык(サラマトチュイルク)「元気です」と返すのが普通です。2つの言葉のセットは、時間帯を問わずに一日を通して使うことができるし、男女による言い方の違いもありません。
そもそも、Салам「サラム」という言葉は、もともとアラビア語です。その意味は「平和・元気」という意味です。イスラム教徒の国々でよく使用される挨拶です。
ちなみに、Ассалом алейкум「アサローム・アレイクム」って聞いたことがありますか?これもアラビア語からの挨拶です。その意味は、「あなたがたに平安がありますように」という意味を表し、相手の平安や幸せを願うという意味です。Ассалом алейкум「アサローム・アレイクム」は国によって女性も使用する場合もありますが、キルギスでは男性同士のみで、女性は使用しないのが普通です。
キルギスでは、女性が結婚して、嫁に行った時、お辞儀する習慣があります。日本語を勉強するキルギス人日本語学習者にとっては日本人のお辞儀に違和感がないのも、ここからだと思われます。
新しい嫁のお披露目の際の挨拶
日本人の皆さんは、とりあえず、Саламатсызбы?(サラマトシズブ?)「こんにちは」だけ覚えておけば、いいです。長くて言いにくいなら、Салам(サラマ)から始めてもいいと思います。