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シルクロード国献男子30年 第21回 世界を子供たちへ-児童育英金
国際協力実践家 小島康誉日本は平和ボケと称せられることもあります。BBCが難民の子供が地中海を渡りきれず亡くなったと報じています。痛ましい悲しいことです。各国で毎日のように起きるテロ、戦争や紛争も続いています。バングラデシュでは国際協力活動出張中の日本人も犠牲になりました。日本と中国はギクシャク状態が続いています。アメリカでは銃乱射事件が頻発。イギリスのEU離脱派勝利で大揺れ。南シナ海を巡る仲裁裁判所の判決への意見もいろいろ。世界の現実は厳しいものです。
同時多発テロ犠牲者追悼で、パリを訪れた際、16年間フランスで暮らしている女性から「時たま里帰りする。日本ではカフェ席取りでハンドバッグなどを置いて注文している。考えられない」と聞きました。老人の手習いで学習中の英語教材には「東京で通勤帰りの女性が電車で寝ている。故郷アメリカではあり得ない」と。
混乱続く世界ですが、地球号の乗客として皆が協力しあってより良くし、子供たちへバトンタッチしなければなりません。私たちも先人の奮闘で引き継いできたのですから。
そんな願いをこめて、1999年に「シルクロード児童就学育英金」をウルムチ市政府と創設しました。当時の中国はまだまだ貧しく、学校へも通えない子供たちがいました。育英金や学用品を毎年贈呈し続けています。昨年は寄宿生用のフトンも。一部は賛同いただいた友人諸氏からの寄付も含まれています。合わせて1,600人を超えます。今年も9月に18回目の贈呈をする予定です。
南山牧場で調印(『外国友人中国情』より転載) 2003年の贈呈、右側が児童代表(撮影:楊新才氏)
2014年の贈呈、児童代表らと(撮影:楊新才氏) 子供たちからの手作り礼状
姫路城、23円50銭で売却 ?!
話は文化財保存に戻ります。「小島和尚を囲む会」の皆様と国宝・姫路城(1993年に日本初の世界文化遺産登録)を参観。大天守保存修理工事(平成の修理)をおえて「白すぎ城」といわれるほど白くなった白鷺城ですが、今なお修復工事が行われていました。シルクロードで文化財保存に協力してきた一人として多々感じました。現在は国の所有となっていますので、費用面などなにかと便宜が図られているでしょうが・・・
雨にかすむ姫路城(2016年6月24日撮影:筆者)
城で手にしたリーフレット(英語版)に“Himeji Castle being also subject to demolition, was put up on for auction and sold for 23.5 yen which represent about 100,000 yen today.”(解体される姫路城は、競売となり、現在の約10万円に相当する23.5円で売却された)と記されていました。正にビックリポンや! 何故か日本語版には記載なし。
明治初期、軍の施設として残す城以外は売却・解体するという「廃城令」による出来事です。城下の金物商が瓦などを売るために買い取ったそうです。しかし、民家の瓦としてははるかに大きいので売れず、解体にも巨費を要するので、放置していたところ陸軍が買い戻し全国56存城のひとつに加えられたとか。もしこの時、軍の決定がなかったらこの美しい姫路城は無くなっていたかもしれませんね。
夜空にうかぶ姫路城(2016年6月23日撮影:筆者)
文化財の保存には大金が必要です。保存するという固い意思が必要です。技術が必要です。一人の力で出来るものではありません。文化財保存を皆の力で。