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シルクロード国献男子30年 第26回 百聞は一見にしかず-各種代表団招聘
国際協力実践家 小島康誉日本と中国はギクシャク関係が続いています。外国ですから体制も考え方も・・・なにもかもが異なります。いわば異国です。対立があって当然ともいえますが、出来ることなら対立を越えた関係だと良いですね。
日中友好という定型語がよく使われます。頻繁に登場するのは「友好状態でないから日中友好を目指そう」との意味合いからでしょう。現在のギクシャク関係は戦争の後遺症。すでに71年、今だ「日中友好、乾杯!」ではさびしいですね。日中友好を冠した諸団体からの退会者も多いそうです。
私は「日中友好」の段階から「日中相互理解」の段階へ入るべきだと主張しています。お互いに理解しようと努力することが大切だと考えています。
中国のメディアでしか日本を知らない彼らに、日本を知ってもらうには、見て感じてもらうのが一番と考えて、1993年から各種団体を招いています。政府・行政・文化・文物・教育・経済・メディアなど多方面です。今年2月にも任華新疆文化庁書記や王衛東文物局長らを招きました。我が国を理解してもらう良い機会になっているようです。
新疆政府主席&経営者代表団(撮影:名古屋市職員) 新疆文化文物代表団(撮影:筆者)
新疆青少年代表団(撮影:居酒屋店長) 新疆教育代表団の一部(撮影:代表団員)
「爆買い」が流行語となりました。中国人観光客が大量に来日、その買物ぶりだけが注目されていますが、その背景を捉える必要もあるのでは。日本製への安心感とともに日本への感情が「反日一辺倒」でないことも示しています。
「爆買いツアー」は中国メディアでしか知らなかった日本の真の姿を肌で実体験する旅でもあるようです。一方、日本メディアで「中国は反日」としか理解していない多くの日本人が彼らに接し中国人を知る機会にもなっているのではないでしょうか。相互理解促進面に注目する必要があると思います。
月々に月みる月はおおけれど月みる月はこの月の月
前日、羽田発北京着。同行取材の天津TVクルーらと合流。夜ウルムチ着。9月15日、于志勇館長(前新疆文物考古研究所長)の案内で新疆博物館参観。天津TV取材に応じて日中共同調査を紹介。ニヤ遺跡コーナーでは沙漠奥深くでの大規模調査の困難さや王墓発見状況、ダンダンウイリク遺跡コーナーで発掘壁画と法隆寺金堂壁画の関連性などを。その後、天山山脈を飛び越えクチャ着。キジル千仏洞へさしかかると眼前に見事な月。一同から歓声が上がりました。
思わず「月々に月みる・・・」が口から出ました。何方が詠んだ歌かは知りませんが、名月を称えていますね。昨年は9月27日が中秋節、ウルムチのホテルで拙論「国際協力の世紀における日本と中国」と格闘しながら月を眺めていました。
素人で上手く撮れませんでした(撮影:筆者) 鳩摩羅什さんと(撮影:天津TV)
クチャ出身の鳩摩羅什三蔵(350-409・異説有り)も名月を眺めたことでしょう。羅什さんは語学の天才、中国四大訳経家のひとりです。玄奘三蔵が有名ですが、遡ること約250年前に「阿弥陀経」や「法華経」など約300巻を訳出、たとえば我が国でもっとも読誦されているお経「般若心経」は玄奘さん訳ですが、「色即是空、空即是色」など殆どの部分は羅什さん訳と同じです。
キジル千仏洞で修行した僧侶たち、その生活を支えた人たち、信者たち、石窟を穿った人たち、壁画を描いた人たち、辺境の辺境まで物資を運んできた人や駱駝たち、それらの資金を出した人たち・・・訪れた何百万何千万の参観者たち・・・もこの名月を眺めたことでしょう。世界各地で苦しむ人々の安寧を願い誦経しました。