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シルクロード国献男子30年 第28回 大愛無疆-無い袖をふるも楽しき絹の道
国際協力実践家 小島康誉日本は国際貢献大国です。世界各地で各種協力を展開中です。政府開発援助(ODA)といった資金面ばかりでなく、国際協力機構(JICA)や国際協力銀行・青年海外協力隊・シニア海外ボランティアなど組織や制度も整っています。また多くのNGOや企業・個人が活動していることは嬉しいかぎりです。
ODAでは巨額資金が投入されています。発展途上国では大いに役立っている一方で、世界第二の経済大国となった中国への援助はもう中止すべきとの意見もあります。
NGO「日本ミャンマー豊友会」は近藤秀二・大木光章両氏が中心となり、ミヤンマーで孤児院や保育園への支援を10年間にわたって継続されています。
青年海外協力隊は約90ヵ国、農林・水産・教育・医療など100以上の分野で、累計約40,000人が活躍。新疆師範大学へ日本語教師として2年間赴任していた岡本和恵隊員を応援するために、同大学で講演したこともあります。
シニア海外ボランティアは青年海外協力隊のシニア版。開発途上国の未来のために豊かな知識や経験を生かしたいという崇高な志の計約5,000人が約70ヵ国で活躍。本制度としてではありませんが、畏友の喜多野高行氏は大手スーパー定年後に3年間大連大学で日本文化を教授、仲間たちと陣中見舞いに出かけたこともあります。講演も行いました。
外国での活動はなにかと苦労が。ましてビジネスでなくボランティア、しかも個人での貢献は並大抵ではありません。最大の難関は資金調達。敬服するばかりです。国際貢献が相互理解を促進することを下記にお示しします。
『ありがとう大連大学の仲間たち』(喜多野高行・宋協毅編/大衆文芸出版社2010)より(部分)
さて、小生の話です。今年9月、キジル千仏洞で新疆文物局・亀茲研究院主催「小島康誉とキジル-小島氏新疆文化文物事業投身30周年記念ミニシンポジウム」と「大きな愛に境界はない-小島氏・・・記念資料展」が開催されました。1986年以来の同石窟修復保護協力を振り返るものです。徐院長につづいて「キジルの縁で30年」を講演。修復前・修復工事・修復後の古い写真に歓声度々。
その際、修復保存に従事している人たち用に飲料水塩分浄化設備資金を寄付したと本シリーズNo.25で紹介したところ、「自分も協力したい、いくら?」と友人から連絡。災害時を除きドネーション文化の根付いていない日本では中々書きづらいです・・・。数年前には職員通勤用バスも寄贈しました。
これまで資金で最も苦労したのは「日中共同ニヤ遺跡学術調査」。大沙漠での大規模調査、約60人が約3週間。打合せ費用にはじまり航空運賃・大量機材・大量食糧・沙漠車レンタル料・ラクダ隊レンタル料・各種手当・・・そんな現地調査を9回も敢行。遺跡保護協力費、報告書数巻出版、国際シンポジウム度々開催・・・。ありがたいことに文科省助成や佛教大学支援も頂きましたが、大半は個人負担ウン億円。ほかにダンダンウイリク遺跡調査、博物館建設、新疆大学奨学金、文化文物優秀賞、小型沙漠車POLARISなどなど数え上げればきりが無いほどです。
「合計いくら?どこから?」と中国で度々質問されたり報道されたりします。笑って答えませんが、新疆政府主催「小島氏新疆来訪30周年記念行事」の一環で出版された『大愛無疆』(韓子勇新疆文化庁書記編/新疆美術撮影出版社2011)に焦健現新疆大学国際文化交流学院院長が「訊ねると金が無いとも言えないし有るとも言えないと答えた。文化遺産調査や新疆大学奨学金など新疆に投じた資金は3,000万人民元に達し、給料・退職金・株式や書画売却金、夫人の援助、そして銀行借入金からである。銀行が外国の遺跡調査で借金を申し込む人はいないし、貸した人もいないと言った。しかし小島氏には貸した」と書いています。
『大愛無疆』より
まあ大体は正しいようです。お笑い下さい。変人ですね。世界的文化遺産保護研究・人材育成・日中相互理解促進に少しでも役立てばと思うだけです。「大きな愛に境界は無い」を実践しているだけです。
エンゲル係数ならぬ「ボランティア係数」があるとすれば、80%90%でしょうか。これからも無い袖を振り続けます。反対どころか大賛成してくれる妻には頭が上がりません。普段は耐乏生活を楽しんでいます。