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国献男子ほんわか日記142 バスキア400万→62億→109億円 「共有」願う

国際協力実践家 小島康誉

深夜に電話、何事かと出れば「先生が以前に持っていたバスキア作品が109億円で落札された」と。「個人でなく会社だ」と応じて再びベッドへ。わざわざ知らせてくれる有難い友人、やはり109億という夢のような金額だからだろう。この「ほんわか」やその前身「シルクロード国献男子30年」で紹介し、拙編『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』への寄稿・永野浩史氏「人生100歳時代~バスキアを前澤ZOZO元社長より前に買った僧侶小島氏の生き方~」でもふれられている作品のことだ。翌日ネットで確かめた。

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ツルカメコーポレーション(現エステールHD)会社案内1990から転載

昔々ジュエリー専門店チエーン社長だった。ジュエリー事業で今日の業績をあげ、アート事業で明日の繁栄の種をまいていた30数年前、日本では見向きもされなかったバスキアやウォーホル作品も多数買い付けた。確か3万ドル(当時約400万円)ほどで買い付けた作品(写真)が、2016年クリスティーズNYオークションで、前澤友作氏が5728万ドル(当時約62億円)で落札し話題になった。その作品が5月18日フィリップスNYオークションに出品され、8500万ドル(当日約109億円)で落札された、とネット報道多々。

前澤氏は「6年間お世話になりました。次のオーナーにも大切にされ、多くの方に共有されることを願っています」とコメントし、作品に一礼する写真がアップされていた。氏のコメントに賛同したい。文化財は公共財であり、広く「公開し共有」されねばならない。小僧が遠く離れた新疆ウイグル自治区で諸氏と「キジル千仏洞」「ニヤ遺跡」「ダンダンウイリク遺跡」の保護研究に全力を投じ、あるいは「文化文物優秀賞」で研究者や保護技術者を支援してきたのは、そんな願いから。優れたアートも遺跡も「人類共有の文化遺産」と思う。
 なおバスキア・ウォーホル・ステラ・ジャスパー・キア・ラウセンバーグ・・・ウン10億円の作品群は数代後の社長時代にすべて売却されたと聞く。「せっかくの先見の明が残念ですね」と言われるが、新たな先々で「共有」されていると思えば「また良し」では?

人生はチャレンジ 変革こそ人生 命燃やす今ここ自分

と、カッコいいことを書いて写したのは2018年3月のこと。この4年間を振り返ると、大したチャレンジも変革もしていない口だけの小僧。新疆へ経営者諸氏案内、奨学金・文化文物賞・児童育英金の提供通じて人材育成お手伝い、佛教大学研究紀要で「ニヤ調査30周年と改革開放40周年」発表、『中国新疆36年国際協力実録』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』上梓、レコードチャイナで「一帯一路実践談」「私が見た新疆ウイグル自治区」「新疆の世界遺産」連載、そしてこの「ほんわか」連載ぐらい。

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小僧楽書:背景は北京空港ターミナル(撮影:筆者)

それまでの延長線上の活動ばかり。まあしかし、それで良いと思っている。大したことなど出来るはずもないごく普通人だから。チャレンジしよう、変革しようと思うだけで十分と割り切っている。おっと思い出した。2019年に「青春18きっぷ」で日本縦断を2回。日々の情報過多生活で怠けがちな念仏をガラ空きドン行で唱えつづけるために。嗚呼ホンワカほんわか。(06/07記)

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。