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国献男子ほんわか日記151 「国葬」賛否 ありやなしや国益意識!

国際協力実践家 小島康誉

安倍晋三元首相の「国葬」が営まれた。天皇皇后両陛下の使者はじめ海外218の国・地域・機関代表約700人をふくむ約4200人が参列。その評価が定まっていないうえに、法的根拠・決定過程・費用・旧統一教会との関係などから賛否が分かれた。国葬への賛否はそれぞれに意義あり、発言自由の日本では当然の権利である。悼むのも怒るのも興味ないのも人それぞれ。首相の説明不足と感じる人は多い。ちなみに筆者もそう感じるが、TV特番を見つつ合掌・黙祷した。

では、外国政府へ通知済みの「国家行事」に対して、野党第一党の代表が国会で首相に対して「国葬反対、内閣葬へ改めよ」と要求したのは如何であろう。一般人でない方の発言が外国にどう伝わり、日本がどう見られるかといった「国益意識」はあるのだろうか。国内で足を引っ張りあう「島国根性」でなく、世界に目を向けないと日本は生き残れない。ウクライナ4州をロシアが一方的に併合し、北朝鮮はミサイル連発(日本へ着弾もありえる)、米中対立激化の中、台湾有事も想定され、国連は機能不全・・・これが世界の厳しい現実。

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中国環球網「産経新聞・FNN調査で岸田内閣支持率42.3%へ12.0%低下、国葬反対62.3%」と黒枠で

どのような理由があるにせよ人の死を政争の具にするのは如何であろう。安倍元首相が民主主義の根幹といえる選挙の応援演説中にテロで殺害されたことは、尋常なことではない。その核心部分を軽視し、批判の矛先が犯人から国葬批判へ向かった風潮は「魔女狩り」ともいえるのでは? 故人の顔写真を射的のマトにしたり、テロ犯人に支援金や物品が寄せられるなんて、どう考えたって妙だ。

日本の国葬と対照的なのが英エリザベス女王の「国葬」。英国はメディアやSNSなどを駆使し「国家の威信」印象形成を世界で展開。女王は「軍の最高司令官」で、大英帝国の名残である56ヵ国からなる「英連邦」の長でもあったが、その植民地支配時代の「影」の部分に言及する報道は英BBCなどでは殆どない。国益重視の表れといえる。どの国も「光」の部分を高く評価し、「影」の部分は抑え気味にして、自国の「歴史」を綴っている。「歴史」は100%正確には書かれない。「歴史」は勝者によって書かれる。新国王は大変だろう。

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日中国交正常化50周年記念切手(一部加工)と中日平和友好条約締結記念切手

日中国交正常化50周年を迎えた。写真の中国切手は筆者がレコチャで発表した「日本と中国『復交三原則』『二分法』」に登場した中日平和友好条約締結を記念して1978年に発行された切手であり、日本の切手は日中国交正常化50周年の先月29日に発行されたもの。どこか可笑しいと思いませんか。日本郵便HPに「それぞれの国をイメージする花と、縁のあるパンダを題材とし、水墨画風に描きました」とある。中国を象徴するともいえるパンダに対して、日本を象徴する動物(中国切手では鶴が描かれている)が描かれていない。こんなところにも「国益意識」の薄さが現れているのでは?

追記:日中関係は冷えたままだが、明るい兆候も散見される。筆者ら日中共同調査隊が27年前に発掘した「五星出東方利中国」錦が、中国で改めて報道された。「一錦千年:“五星出東方利中国”里的民族交融史」と「小島康誉:“精絶国”是如何重見天日的?」、共に「1995年日中調査隊が発掘。20世紀中国考古学で最も偉大な発見」などと記された。50周年の9月29日に合わすかのように9月下旬に報じられた点に注目したい。なお「一錦千年・・・」の抄訳は「漢代の絹織物・・・中国で改めて紹介記事」(レコチャ)、「小島康誉・・・」の抄訳は「日中が協力・調査した精絶国 貴重な国宝も発見」(ヤフー)と配信された。(10/11記)

ウクライナだけでなく 世界は厳しい 国境の島

前回の「ここはどこ?」の答え:①北海道の森町。JR森駅ホームからの「明治天皇御上陸地」碑。明治天皇北海道巡幸の明治14年(1881)、室蘭から内浦湾を渡り森に上陸されたことを記念している。なお有名な「いかめし」店は駅前にある。②JR岡山駅前。おとぎ話の桃太郎像。「桃から生まれた桃太郎が老夫婦に育てられ、犬・猿・キジを従え鬼ヶ島で鬼退治し戻り、育ての親に孝養を尽くす」勧善懲悪物語。③沖縄・与那国島の西崎(イリザキ)。日本最西端の岬、西に111㎞隔てた台湾が肉眼で見える日が年に数日あるとか。

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西崎の休憩所の床に描かれている周辺地図(撮影筆者)

写真の黒潮の西が台湾、その西が中国大陸。与那国島の北方には尖閣諸島が描かれている。米中対立は新段階へ入り台湾周辺は緊張感が漂っている。国境の島・与那国には2016年に陸上自衛隊が、22年に航空自衛隊が配備された。昨年の岸防衛相に続き先月には浜田防衛相が激励訪問、2年連続視察は緊張ぶりを示している。

ちなみに吉岡秀隆さん主演で人気をよんだTVドラマ「Dr.コトー診療所」が撮影されたのは与那国島。16年をへて映画化され、今年12月公開予定とか。吉岡さんとの接点は東海TVの依頼で新疆政府の撮影許可を仲介し、撮影現場に立ち会ったこと。番組「新シルクロード考・砂漠に降りた飛天たち」はフジTV系列で全国放送された。新疆政府歓迎宴でウイスキーをグイグイ飲む姿が印象に残っている。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。