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国献男子ほんわか日記176 第35回新疆大学奨学金 微力継続4679人

国際協力実践家 小島康誉

ロシアによるウクライナ戦争、600日経過するも終結せず死者多数。イスラエルとパレスチナ間で戦火勃発。誰も望まないはずなのに世界各地で紛争次々。「平和な世界を」と叫ばれるも、現実は「争いの連続」。相互理解は実に難しい。相互理解が難しいのは、日中間も同じ。最近、報じられた両国での調査では相手国へ「良くない」と印象を持つ人の比率は高いまま。昨年は「日中国交正常化50周年」、今年は「日中平和友好条約締結45周年」。しかし関係は冷えたまま。そんな今だからこそと老体に鞭打って、新疆3週間活動。

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第35回新疆大学奨学金授与式、筆者左が姚学長、右が盛新疆政府外弁処長(撮影:楊新才氏)

その一つが新疆大学奨学金授与。以下は「新疆日報」(23/09/14)記事の要訳。「日本友人で新疆政府文化顧問の小島康誉は47人の新疆大学の学生・院生へ奨学金を授与した。設立以来、計4679人を奨励した。81歳の小島は『新疆は希望に満ちた所、しっかり勉強して役立つ人材になってほしい』などと挨拶。姚強学長は『1986年設立以来、小島奨学金は新疆大生が目指すブランドになった。小島先生に感謝する』などと挨拶。受賞者の王海雲院生は『国家に報いる気持ちと感謝の念を持ち、一歩一歩確実に進んでゆく』などと挨拶。小島康誉は長年にわたり日本で新疆を紹介し、水利プロジェクトや和田博物館建設など新疆の文化・経済・社会発展に尽力した」。

小さな活動に過ぎないが、姚学長挨拶に「小島奨学金は新疆大生が目指すブランドになった」とあるように、相互理解実践継続×継続×継続。「第22回シルクロード児童育英金」「第20回文化文物優秀賞」も同様。「ナンダ。金を出しているだけか!」と勘違いする方もおられよう。世界的文化遺産保護研究協力ふくめて提供しているのは「希望」「大きな愛」。
付記:今回は円安の影響をモロに受けた。契約は日本円、昨今の円安で人民元換算では目減りし、授与者数は前回より減少した。一方の「文化文物優秀賞」の契約は人民元、円安の影響で振込時の日本円は以前より約3割増。畏友からの布施と僅かな資産を売却して準備した。一部報道に新疆大学奨学金授与者計が3712人とされているのは間違い。

世界的文化遺産保護研究協力がらみで記せば、東京富士美術館で開催中の「世界遺産 大シルクロード展」へ出かけた。入口には筆者が1986年から修復保存に協力し2014年に世界遺産となったキジル千仏洞の写真。展示品には私たち日中隊が1995年ニヤ遺跡で発掘した「草花文綴織靴」と2002年ダンダンウイリク遺跡で発掘した「西域のモナリザ」も。2005年NHK「新シルクロード展」でも展示された貴重文物。参観しつつ苦闘した国際協力が脳裏に。「保存や発掘に尽力した日本人が隣にいる」とは参観者は思わないだろう。同展は再来年2月まで福岡・宮城・愛媛・岡山・京都へ巡回予定。(10/24記)

相互理解つながり パンダ がんばれ!

日本で人気のある「パンダ」。中国政府から世界各地へ貸与され「外交官」として活躍している。参観が抽選になることさえある。相互理解に一定の役割を果たしている。バンダを通じて、出身国である中国への理解が更に進めば良いのだが、中々繋がらないようだ。

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9月11日、羽田/北京CA184便の軽食のフタ(撮影:筆者)

保護対策が実り個体数が増加し、「国際自然保護連合」は2016年に「絶滅危惧種」から外し、中国は21年に「絶滅危惧種」から外した。しかし安心は禁物、昔のことだが、バンダの毛皮が密売されていると聞いたことがある。人間は珍しい物に興味を持つ動物。貴重な文化遺産と同じようにパンダなどの珍奇な動物や植物も保護が必要。ほんわかほんわか。

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。