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国献男子ほんわか日記26 国際貢献の現場から
国際協力実践家 小島康誉今年もまもなく大晦日、早いものですね。貴方様にとりまして如何な年でしたでしょうか。日本でも世界でもいろんなことがありましたね。ありがとうございました。
今回は暖冬のウルムチから国際貢献の実態を報告します。暖冬といっても零下10度ほどですが。羽田から北京経由ウルムチ着。李軍新疆文物局副局長らの出迎えをうけホテルへ。
★任華新疆文化庁書記歓迎宴:任書記挨拶「長年の貢献に感謝」に始まり、乾杯の連続。参加者一人が酔いつぶれたほど。ホテル帰着24時すぎ。シャワー浴び十念しベッドへ倒れこむ。数回前に書きましたが宴会も重要な外交活動、盛り上げるのも必須能力。
蛇足ながら、中国での書記とは中国共産党のトップです。中国特色のひとつで政府はじめ大学などあらゆる組織に共産党支部があり、その組織を統括。例えば、文化庁の書記の下に庁長、といった具合です。習近平氏のメディアでの紹介が中国共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席の順であることからも共産党の位置づけがわかります。
★ウルムチ職業大学参観:学生数15,000人の3年制短期大学。ウエブ技術・アニメ制作・陶器作り・絵画・・・と数十ものコース。日本で言えば大型の専門学校でしょうか。織物コース展示品には私たち日中調査隊が発掘した「五星出東方利中国」錦の模造品も。10数年前に招聘したウルムチ市教育代表団の一人がこの大学の副学長になり、その要請での参観。
★小島新疆文化文物事業優秀賞:1999年に設立、第一線で活躍する人たちを奨励する賞です。会場は文化庁会議室、約130人参加。王衛東新疆文物局長の挨拶に続き、アクス地区タリム歌舞団・新疆文物考古研究所など4団体へ各20,000人民元、李冬新疆画院一級美術師・葉梅亀茲研究院副研究員・凱賽尓麦合木提ニヤ遺跡保護巡視員など20人へ各10,000人民元を贈呈。受賞者代表3人が感謝の挨拶。そして私が挨拶。記念撮影。その後、座談会と慰労夕食会。苦労話を聞き、慰労激励。
日頃の苦労を称えて(撮影:楊新才氏)
★新疆文物局との打合せ:文物局で王局長・李副局長らと。来年は日中共同ニヤ遺跡学術調査開始30周年、これを記念して文物展示会・中国側編集報告書刊行・日本側編集写真集・記念講座で基本合意。キジル千仏洞壁画共同研究再開でも合意。NHK「シルクロード・壁画の道をゆく」好評で、来年30分版放映予定と伝える。また新しいTV番組も今後検討することに。
★シルクロード児童育英金:1999年に設立、豊かになった中国、まだまだ貧しい家庭も多く、その子供たちの勉学を手助け。一時は友人からも寄付いただきましたが、現在は全額小生が。カザフ族の薩尓達坂小学校で王熠ウルムチ市外事弁公室主任の挨拶に続き、児童40人へ各1,000人民元。貧困児童の一年分生活費とか。児童350人全員へ学用品9点セットを贈呈。校長と児童代表が喜びの挨拶。私が挨拶。記念撮影。児童たちから手書き感謝状いただく。
子供たちに幸あれ(撮影:楊新才氏)
★小島新疆大学奨学金:1986年に設立した給与型奨学金。この大学で最初の奨学金、250人余へ各150人民元。当時の生活費の半年分にも相当。順次増やし数年前から3,000人民元、物価急上昇の中国でも学生1ヵ月分生活費としては十分と。孟凡麗副学長挨拶に続き、56名に授与。受賞者代表2名、そして私が挨拶。記念撮影。終了後にサイン・自撮り殺到、ありがたいことです。これ迄の受賞者は約4,500人、各界で活躍中。
私の挨拶「自分の為に新疆の為に中国の為に世界の為に、努力、努力、更に努力を」(撮影:楊新才氏)
★答礼宴:今回世話になった各組織の幹部を招き感謝小宴。笑って飲んで食べ、シボ族モンゴル族の歌も出るなど和気藹々。以上が滞在3日間の活動です。
書けば簡単ですが、度々連絡し調整し・・・中々です。部下がいるわけでなく、一人で外国と打合せ、しかも急成長中の全く体制の異なる中国での国際貢献。多くの方々のおかげですが、よくも35年も続けてきたものです。感謝感謝の35年。体力知力金力、限界に近づいています。ご指導と応援よろしくお願いします。
私の活動は中国ではWeb「百度」などで多く報じられていますが、自ら発信すべく中国語サイト「中国歴史文化遺産保護网」の「一帯一路実践談」でも掲載を始めました。天津の孫躍新博士(京都大学建築学)・周培彦夫人の尽力をえて、2000年に立ち上げた文化財保護研究を取り上げている公益性ネットです。
「一帯一路」は経済や政治中心で語られていますが、文化の道・協力の道でもあり、その実践例としてこれまでの活動を簡単に紹介しようと考えました。多くの中国人に見てもらい日中相互理解を促進する一助となることを願っています。検索いただければ幸いです。
明日は東京へ帰ります。戦争・紛争・テロ・憎しみ……続く世界。輝く新年をお迎えください。
カメのようにツルのように
私は数年前まで佛教大学の客員教授を務めていました。研究室は同大学の宗教文化ミュージアムにあります。かつて公達たちが遊んだ嵯峨野、広沢池の近くにあり、大学グランドや付属幼稚園に隣接しています。今も佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構の共同代表(もう一人の共同代表は安藤佳香教授)として、また宗教文化ミュージアム研究協力者として、月に二日程度は出かけています。
年金生活者が品川から通うのはシンドイですが、楽しみは園児たちのはしゃぐ声と若者たちの掛け声です。この人たちの未来に少しでも役立つ老残を過ごします。
小僧落書き、背景はキジル千仏洞ポプラ並木(撮影:筆者)
とは言っても、ただの庶民、できる事はしれています。ある時はカメのようにゆっくりゆっくり、ある時はツルのように超スピードで仕事や国際貢献をしてきました。これからも同様です。人生難しく考えずに楽しむようにしています。ほんわかほんわか。カメと言えばウサギが対比されますが、ふた昔まで「ツルカメコーポレーション」社長を務めていましたので、ツルとしました。ほんわかほんわか。