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国献男子ほんわか日記64 独・仏・タイ語も登場 ますます相互理解

国際協力実践家 小島康誉

写真は、東海道新幹線の座席背もたれに貼られた「運行情報はこちらを」です。日本語・英語につづき、中 国語の繁体字・同簡体字・韓国語・タイ語・ドイツ語・フランス語の計7言語8書体で対応と記されています。タイ語は意外ですが訪日客急増中とか。やがてス ペイン語やアラビア語などが追加されるかも。

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東海道新幹線の背もたれ(撮影:筆者)

このシール、最近になって貼り出されました。それだけ外国人客が増えているからでしょう。昨今は車掌さんが「間もなく京都です。左側のドアーが開き ます」と英語で生アナウンス。以前は録音テープだけでした。外国人の多い東京モノレール羽田線は以前から日・英・中・韓の4ヵ国語放送でしたが、最近では 京都嵯峨野線も。相互理解への対応ですね。

世界には7000ほどの言語があるとか。言葉の違いは相互理解を困難にする一因。言葉を乗り越えて相互理解を促進するには、まず交流。4月、海上自 衛隊の護衛艦「すずつき」が「旭日旗」を掲げて中国青島港へ入港。艦内参観には初日だけで約5000人が訪れ、日本理解が一歩進んだようです。交流が相互 理解へつながる一例ですね。

友人のアンドレ・ビショップさんは日本大好きオーストラリア人、メルボルンで居酒屋などを経営。日本文化を広めています。メルボルンや銀座で会食した際の日本酒の蘊蓄には舌を巻きました。さすが獺祭ブランドアンバサダー。彼がYAHOO!JAPANニュースに登場、「オーストラリアの酒サムライ 強い味でファン開拓」。これも相互理解へつながる一例かと思います。

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   雪のホム村(撮影:王希鳳氏)                  秋のホム村(2005年9月撮影:筆者)

「人民網日本語版」が左上のような写真数点入りで「新疆の山村の雪景色、“水墨画の世界”広がる」と報じました。10数年前に「小島和尚を囲む会」の皆さんと小学校を造った禾木村(ホムorハムとも)の写真で、懐かしく思い出しました。北新疆の観光地カナス湖近くのモンゴル系トワ族の小集落です。竣工式の写真は『中国新疆36年国際協力実録』に掲載しています。あの子たちはもう立派な大人になり活躍していることでしょう。ささやかな校舎建設も相互理解を促進しますね。

色は空なり

仏教で最も有名な語句は「色即是空」でしょうか。「般若心経」に登場します。そのまま訳すと、「色は空なり」で意味が分かりにくいことでも有名で す。古代インドの言葉から昔むかしに訳されました。一般に読誦されている「般若心経」は玄奘三蔵訳ですが、それより240年ほど前の鳩摩羅什三蔵訳もほぼ 同じです。ともに「色即是空」と訳されています。いずれも現代の中国語ではありませんし、日本語でもありませんので、分かりにくいのは当然ですね。ほんわ かほんわか。

「色」は色彩でも色事でもありません。「空」は空(カラ)でも空しいでもありません。佛教大学で学んでいた頃、田中典彦教授(現学長)から「あらゆ る物事は、種々なる要素が相関わって生起している状態である」と教えてもらいました。つまり「色」とは、スマホや本・ランチ……といった「物」だけでな く、「平成から令和へ」「人口減少」「トランプ氏来日」「明日は晴れ」「国連決議違反」「池袋暴走事故」……といった「事」までふくめています。

それらは「状態であって、固定的ではない」という考え方が「空」です。一例をあげれば、コップという状態の中にある水という状態は、放置すれは蒸発 して酸素と水素という状態になるし、冷凍すれば氷という状態になってしまいます。晴れは曇りにもなり吹雪にもなります。不況は好況にもなり、病気は元気に もなります。

確かにその通りですが、未熟者の私は「状態」とは思えず、イライラしたり怒ったりグチを言ったり……の日々。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏……と唱えて救われている日々です。

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小僧楽書:背景は北海道北斗市マンホール蓋(撮影:筆者)

色も鮮やかなマンホール写真に「色は空なり」と書いてみました。見事なマンホール蓋ですね。青春18きっぷで日本縦断した際、新函館北斗駅前で見つ けました。証拠として青春18きっぷと長靴も写しました。この日は14時間かけて、青森から旭川まで乗り換え乗り換え行きました。

77歳老人の青春18日本縦断に興味ある方は、ほんわか日記61回62回をご覧ください。忙しく飛び回っておられる方からすれば日本縦断電車旅など「何にもならない」こととも言えますが、それはそれで意味あること。若者にとって旅のいろんな経験は人生の宝ともなり、小僧のように念仏つづけての旅には「空」を味わい救われる喜びがあります。

「色は空なり」、何事も状態と思えば、やがて変わると思えば「腹がたっても、腹はたちません」。笑って受け入れることが出来ます。と言っても、実はそう努力しているだけの小僧です。嗚呼ほんわかほんわか。

 

1942年名古屋生まれ。佛教大学卒。浄土宗僧侶、国際協力実践家。66年「宝石の鶴亀」(後にツルカメコーポレーション・あずみと社名変更、現エステールHD)を起業。93年株式上場。96年創業30周年を機に退任。中国新疆へは82年以来、150回以上訪問しキジル千仏洞修復保存、ニヤ遺跡やダンダンウイリク遺跡を日中共同で学術調査するなど文化財保護研究・人材育成など国際協力を多数実践。佛教大学客員教授を歴任し現在は佛教大学内ニヤ遺跡学術研究機構代表、新疆ウイグル自治区政府顧問。編著『日中共同ニヤ遺跡学術調査報告書』『日中共同ダンダンウイリク遺跡学術調査報告書』『念仏の道ヨチヨチと』『新疆世界文化遺産図鑑』『中国新疆36年国際協力実録』『Kizil, Niya, and Dandanoilik』『21世紀は共生・国際協力の世紀 一帯一路実践談』「スタイン第四次新疆探検とその顛末」など。日本「外務大臣表彰」・中国「文化交流貢献賞」「人民友好使者」ほか受賞。